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「アンドファームスマート農業実証コンソーシアム」キックオフミーティングを開催(岩手県盛岡市)

2019年06月10日

 岩手県で「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」として取り組むこととなった「中山間地域の土地利用型野菜輪作体系における省力性・生産性向上に向けたスマート農業技術一貫体系の実証」のキックオフミーティングが、5月28日に農研機構東北農業研究センター(岩手県盛岡市)で開催された。


 実証地域の岩手県県北地域は、生食用キャベツを中心とした国内でも有数の野菜産地であり、大規模化と機械化が進んでいるが、熟練オペレータや労働力の確保が困難なため、面積拡大や家族経営からの脱却の阻害要因となっている。また、キャベツ生産においては、拾い取り収穫のため労働生産性の低さが課題となっている。そこで、本実証ではスマート農業技術を取り入れた土地利用型野菜生産技術一貫体系を確立することにより、雇用労働力を活用した大規模かつ超省力的で生産性の高い野菜生産を実現する、企業的農業経営体のモデル構築を目指すこととしている。


 当日は実証コンソーシアムである「アンドファームスマート農業実証コンソーシアム」の構成機関担当者や農研機構東北農業研究センター等約50名が集まり、実証計画の具体的な検討が行われた。


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右 :代表機関として開会の挨拶をする岩手県農林水産部農業普及技術課の菊池総括課長


 本実証は株式会社アンドファーム(岩手県岩手町)の圃場25haを使って実証が行われる。傾斜地圃場における露地野菜(キャベツ、ダイコン、ナガイモ)でスマート農業技術一貫体系を検討するため、技術的な課題も多い。会議では実証項目ごとに実証担当が目標、具体的計画、推進上の問題点と課題等を説明し、出席者による検討が行われた。


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実証項目ごとに説明と検討が行われた


 今年度の実証項目と達成目標は以下の通り。実証は要素技術区、一貫体系区、慣行区の3区を設け、比較検討ができるような試験設計を組んでいる。


1.土壌改良資材及び肥料の散布作業の高精度化実証(キャベツ、ダイコン)
 自動操舵補助システムと車速連動散布機を組み合わせ、土壌改良資材及び肥料の高精度な散布走行や均一散布を実現することにより、生育斉一性の向上及び単収向上を図る。


2.耕起作業の高精度化実証(キャベツ、ダイコン)
 耕起作業において、熟練度の低いオペレータでも熟練したオペレータと同等以上の精度での作業を可能とするため、自動操舵補助システムの活用により、耕起作業の作業精度向上及び疲労軽減を図る。


3.畦立・施肥作業の高精度化実証(キャベツ)
 既存トラクタに自動操舵補助システムを装着し、精度の高い畦立作業を実証することにより、後の管理作業(定植や中耕除草等)の安定化を図る。また、高速・高精度畦立同時二段局所施肥機を活用することにより、①畦立施肥作業時間の削減、②生育斉一化及び単収の向上を図る。


4.リモートセンシングによる生育モニタリング実証(キャベツ、ダイコン)
 人工衛星やマルチローターの画像解析により、生育状況を把握し、追肥や防除等の管理に反映させることにより、生育斉一化及び単収の向上を図るとともに、収穫適期を予測し、計画出荷につなげる。


5.中耕・除草作業の高精度化実証(キャベツ)
 既存のトラクタと中耕除草機に自動操舵補助システムを装着し、栽培株への損傷を最小限にできる中耕除草作業を実証することにより、生育斉一化及び単収向上を図る。


6.病害虫防除作業の効率化実証(キャベツ、ダイコン、ナガイモ)
 既存のトラクタとブームスプレイヤに、自動操舵補助システムを装着し、前進及び後進での防除作業を実証することにより、圃場内での移動旋回作業を減少させ、省力化を実現する。
 また、防除用マルチローターを実証することにより、雨天後の適期防除を可能とするとともに、ブームスプレイヤで必要な圃場内での移動旋回作業を減少させることにより、作業時間の削減を目指す。


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(マルチローターによる防除のイメージ画像)


7.収穫・出荷作業の効率化・軽労化実証
(1)自動収穫機による収穫・出荷作業の効率化・軽労化実証(キャベツ)
 一般的に加工業務用キャベツで使用されている自動収穫機を流通形態も含め実証することにより、生食用キャベツにおける収穫機の利用可能性を把握する。


(2)自動操舵システムによる定植・収穫作業の効率化・軽労化実証(ナガイモ)
 オペレータの負担軽減を図るため、既存トラクタ及びトレンチャに自動操舵補助システムを装着し、精度の高い定植・収穫作業を実証することにより、省力化を実現するとともに、収穫時の損傷による収穫ロスの低減を図る。


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(トレンチャー作業のイメージ画像)


(3)アシストスーツによる収穫・出荷作業の効率化・軽労化実証(キャベツ、ダイコン、ナガイモ)
 軽量なアシストスーツを収穫作業やコンテナ運搬作業等に導入し、作業の軽労化を実証し、身体的負担の軽減を図る。


 会議の中では、農研機構革新工学センターの大森専門PO(プログラムオフィサー)から助言をいただきながら、問題点に対する具体的解決策を議論するなど、今後の実証に向けての前向きな検討が行われた。


※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:露BO2、課題名:中山間地域の土地利用型野菜輪作体系における省力性・生産性向上に向けたスマート農業技術一貫体系の実証、事業主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)」の支援により実施されました。