津軽西北地域「大規模水田作スマート農業実演会」を開催(青森県中泊町)
2019年05月27日
青森県の津軽西北地域は、本州最北端の寒冷地であるが、冷害を克服し生産性の高い稲作経営が行われている。しかしながら、近年の担い手の高齢化や担い手不足のため、熟練者の冷害回避技術の継承や、大規模化に伴うきめ細やかな栽培・労務管理等が困難になりつつある。そこで、熟練者の技術をロボット化やICTなどの先端技術によって代替し、省力安定生産と経営向上につながる大規模寒冷地稲作体系の確立をめざした、スマート農業技術の開発・実証プロジェクトに取り組んでいる。
5月20日、実証経営体である株式会社十三湖ファームの実証農場(青森県中泊町)で「大規模水田作スマート農業実演会」が開催された。当日は最高気温27℃と寒冷地とは思えない暑さの中、県内農業関係機関、生産者、農業高校、マスコミ等、100名を超える参加者が熱心に見守る中、ICT田植え機による田植え作業と水管理システムのデモが行われた。
左 :実演会で開会の挨拶をする青森県西北地域県民局地域農林水産部の山内部長
右 :田植え実演はクボタ乗用形田植機ナビウェルNW8S-F-GSで実施
田植え作業はGPSを活用したICT田植機で実施した。熟練オペレータでなくても高精度な作業が実現できるため、人手不足や人材育成を補う有効な手段として期待される。また、高密度播種育苗苗(密播苗)の移植にも対応しており、当日は乾籾230g/箱で育苗した苗(品種:まっしぐら)を精度良く植え付けした。栽植密度60株/坪で植え付け、10a当たりの苗箱数を12~13箱程度で処理することにより、省力化とコスト削減もねらう。さらに、次年度は可変施肥機能を利用し、生育の均一化による収量品質の安定と、施肥低減によるコスト削減をめざす。
ほ場水管理システムは、実証圃場約20haに20台設置され、水管理の省力効果を検証する。また、きめ細かな水管理による冷害回避にも力を発揮することが期待される。
左 :始点Aと終点Bを登録することで、以降はA点とB点を結ぶ直線に合わせて自動的に直進がキープされる
右 :直進キープに加え株間キープと条間アシスト機能により、1.5haの大区画ほ場でも、まっすぐ等間隔に綺麗な植え付けができた
本実証プロジェクトではこの他にも、
・営農支援システム(KSAS)による管理の効率化
・ロボットトラクタ・自動操舵システムの導入による作業効率の向上
・GPSレベラによる均平作業の効率化
・収量・食味センサ付きコンバインを活用した圃場メッシュマップ作成による施肥の効率化
・農業用ドローンによる防除作業の効率化
等の実証を行う予定であり、実演会終了後は、コンソーシアム構成員と専門家による推進会議が開催され、今後の実証計画についての検討が行われた。
左 :実証圃には圃場水管理システムWATARASが設置されており、スマートフォンによる制御の実演が行われた
右 :推進会議で挨拶をする青森県産業技術センター農林総合研究所の野沢総括研究管理員(実証代表者)
これらのスマート農業技術を体系的に導入することで、労働時間とコストの削減、収量向上、規模拡大の実現を目標として実証を行う。
※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:大B03、課題名:冷害を回避し多収を実現する大規模水田作スマート農業の実証、事業主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)」の支援により実施されました。