大規模水田輪作(水稲・大豆)における園芸作物(枝豆)導入に向けたスマート農業一貫体系の実証プロジェクト始動
2019年05月13日
新潟県新潟市は全国第一位の水田耕地面積を誇り、コシヒカリをはじめ、野菜や果樹等を生産する大農業都市であるが、近年の農業就業者の減少、次世代後継者不足は新潟市においても大きな課題となっている。
これらの課題を解決するため、2014年の国家戦略特区(農業特区)指定以降、全国に先駆け、ICT田植機や自動運転トラクタ・コンバイン等を用いた実証試験に取り組んできた。
平成31年(令和元年)度からスタートする国の事業、「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」には、新潟市が代表機関となり、株式会社白銀カルチャーが経営体として、参画することとなった。
白銀カルチャーの経営面積は、平成30年度時点で85ha超と大規模経営で、水稲の他、大豆、大麦、枝豆等の作付けを行っている。その中でも今後は、単価が比較的高い枝豆の作付面積拡大に力を入れ、「儲かる農業」を目指すこととしている。
しかしながら、枝豆の植え付け時期は、春先の稲作作業と競合し、その後も大豆、大麦と作業が続くため、なかなか面積を広げられずにいる。そこで、稲作作業をスマート化することで省力化を図り、その分の労力を枝豆に回し、規模拡大を図ることを狙いとして、本プロジェクトに取り組む。
4月18日、白銀カルチャーの試験ほ場にて作業が始まった。
今回、省力化として取り組むのは、「無代かき水稲不耕起V溝直播栽培」である。
通常移植栽培は、耕起・代かきをし、並行して育苗ハウスで苗を栽培、タイミングを見計らって田植え作業に入るが、膨大な労力の他、育苗ハウスの土地も必要となる。コーティング直播は育苗の手間は省けるが、代かきは必要で、通水されるまで待たなければならない。「無代かき水稲不耕起V溝直播栽培」の場合、代かきは不要で、水も必要ないため、作業適期が長く、前倒しの作業が可能である。さらに、苗箱運搬の手間も省けるため、少ない人数で作業を行うことができる。
左 :無代かき水稲不耕起V溝直播は同時施肥も可能
右 :籾のまま播種できるため、作業前の準備も省力化できる
スピードは移植作業の2倍で、作業効率も向上 (クリックで動画を再生します)
今回はさらに、アグリロボトラクタとの2台協調作業を行い、無人トラクタで田面を整地した後、すぐに播種作業を行った。
手前のトラクタで播種作業を行っている間に、奥の無人トラクタが先に田面を整地することで大幅な時間短縮および、労力の削減となる
今後は、マルチロータ複数同時自立飛行による薬剤散布(予定)や、水田センサによるきめ細かい水管理とともに、KSASを利用した営農管理も行っていく予定である。
そして、平成30年度は3ha程であった枝豆面積を倍の6haまで広げるとともに、無代かき水稲不耕起V溝直播栽培面積の割合も増やしていくこととしている。
※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:大D10、課題名:大規模水田輪作(水稲・大豆)における園芸作物(枝豆)導入に向けたスマート農業一貫体系の実証 事業主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)」の支援により実施しております。