木曽の赤カブ-家庭の食卓に欠かせない木曽地域の赤カブ
2023年01月25日
特徴と由来
●長野県木曽郡木曽町、上松町、南木曽町、木祖村、王滝村、大桑村、塩尻市
木曽地域には「開田(かいだ)蕪」「王滝蕪」「三岳黒瀬蕪」「細島蕪」「吉野蕪」「芦島(あしじま)蕪」という6種類もの赤カブがあり、古くから栽培されている。カブの表面は赤紫色、中身は白色で、形状や大きさ、肉質などはそれぞれが異なる特徴を持っている。
三岳黒瀬蕪はいったん途絶えたものの農村女性グループの熱意で復活し、栽培者を増やしてきた。この6種類の赤カブはいずれも県の「信州の野菜」に選定されており、大切に作り継がれてきている。
左から吉野、芦島、三岳黒瀬、王滝、開田、細島
産地の動向
赤カブの栽培は、長野県木曽郡木曽町、上松(あげまつ)町、南木曽町、木祖村、王滝村、大桑村および塩尻市の一部で行われている。木曽地域のなかでも温暖な南木曽町、大桑村では、もともと赤カブの栽培はなかったが、平成26年度から生産が始まった。
カブの茎葉等は無塩の乳酸発酵食品である「すんき」に、地下部のカブは「甘酢漬け」に加工されている。
現在、地域の農村女性組織をはじめ漬物業者等で製造され、木曽の味として地域内外で販売されている。
地域伝統食
すんきは赤カブの茎葉等を、塩を一切使わずに乳酸発酵させた漬物で、長野県内の木曽地方だけで作られてきた独特の食文化であり、県選択無形民俗文化財「味の文化財」に指定されている。平成29年度には地理的表示保護制度(GI)の登録産品になり、「すんきブランド推進協議会」において、会員であるすんき製造者の生産工程管理記録の確認を行い、伝統的な技術と味を守っている。
作り方は、赤カブの茎葉等をそのままの形か食べやすく刻んで湯通ししたあと、種となるすんきを加えて乳酸発酵させる。漬け込んだ茎葉等はべっこう色になり、独特の酸味がある。
そのまま食してもよいし、鰹節をのせて醤油を垂らしてもおいしい。
木曽地域では、味噌汁の具としてすんきを入れた「すんき汁」や、温かいそばにすんきをのせた「すんきそば」が昔から伝わる一般的な食べ方である。木曽地域はそば店が多いので、季節になるとすんきそばを目当てに訪れる観光客も多い。
伝統食「すんき」
地下部のカブは、甘酢漬けに加工されている。漬け込むと中身の白い部分も色鮮やかに染まり、カブの種類によって発色や食味、歯ごたえが違うため、6種類の味が楽しめる。
木曽の赤カブは地域の人々から長く愛され、食されてきた伝統野菜であり、特にすんきは発酵食品として、再び注目が集まっている。
三岳黒瀬蕪の甘酢漬け
長野県木曽農業農村支援センター
●月刊「技術と普及」令和3年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載