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甘味が強く、酸味とのバランスもよい大粒のイチゴ新品種「かなこまち」の育成

2022年12月06日

育成の背景および目的
 県内のイチゴ生産者の多くは複数の品種を栽培しており、生産者を含む関係者からは、「他県産との差別化を図るためには県オリジナル品種が必要である」との要望がありました。このため、年内から収穫でき、栽培期間を通して糖度が高く、糖酸比が安定して良食味であること、色艶や果実硬度が一定のレベル以上であること等の特性を有する品種の育成を目的としました。


特徴とメリット
 県内では、観光摘み取りや直売が中心ですが、市場出荷もあるため、両方に対応が可能な品種の育成を目指しました。
 育成の経過は、2014年度から果実品質が良好で、早生で連続収穫性が高く、高収量、栽培が容易であるなどを育種目標として交配し、2017年度に「紅ほっぺ」(静岡県育成品種)と「やよいひめ」(群馬県育成品種)の交配から有望系統「B×Y#9」を得ました。この系統の特性調査や現地栽培試験を実施した結果、生産者から良好な評価を得たことから、「かなこまち」(神奈川生まれの美しくて美味しいイチゴ)と命名し、2020年9月2日に種苗法に基づき品種登録出願し、同年12月21日に農林水産省が出願公表しました。


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「かなこまち」の果実と頂果房の着果状況


 「かなこまち」の食味は、糖度が高く10~12度(°Brix)で、酸味が0.9~1.3%と高く、甘酸味のバランスが良好です。果実はやや硬めで「紅ほっぺ」と「やよいひめ」の中間で、赤色が鮮やかでツヤがあり、中まで赤いです。果実の大きさは2L、3L級の大粒の割合が多く、整形で、収獲量も「紅ほっぺ」並みに多いです。熟期は12月中下旬から収穫で、「とちおとめ」と比べるとやや遅いですが、連続収穫性を有するので、成り休みが少ない特徴があります。また、芽なし株の発生がごく少なく、ランナーも多数出るので、苗数を確保しやすいなどの特徴もあります。


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成果の活用や今後の課題等
 「かなこまち」は、2021年6月に県と全国農業協同組合連合会神奈川県本部で利用許諾契約を締結し、現在、神奈川県いちご組合連合会の会員(128名)のうち令和3年度に53名の生産者が、全国農業協同組合連合会神奈川県本部から親株を購入し、栽培を開始しています。

 今後は、クリスマスシーズンを最初の収穫ピークとするための早期収穫技術の開発や、高品質果実の安定生産技術等を確立するとともに、普及指導部署や農協などの関係機関と連携して、計画的に生産拡大することが課題となっています。


執筆者
神奈川県農業技術センター
藤代 岳雄