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美馬太きゅうり-煮炊きしてもおいしい、地元で愛されるキュウリ

2021年06月07日

特徴と由来

●徳島県美馬市

 美馬太きゅうりは美馬市の在来種として作り継がれてきたキュウリで、普通のキュウリに比べて太く丸い形をしており、重さは500~800gになる。皮は固いためむき、縦2つに割り、種を取り除いてから調理に用いる。形が崩れにくいので、生食だけでなく煮たり炒めたりしてもおいしく食べることができ、冷や汁や漬物等、地域の伝統料理の中で親しまれてきた。

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美馬太きゅうり

産地の動向

 自家採種で大量生産ができないことや、食生活の変化等により、年々栽培面積が減少していたが、平成19年度に徳島県内の農業高校生の研究で取り上げられたことで、地元の生産者たちが貴重な伝統野菜として見直すきっかけとなった。美馬市の産直市運営団体では地元小学校で美馬太きゅうりの栽培・収穫・調理と、産直市での販売体験までを行う食育活動を開始し、次世代への伝承や、消費者への認知度向上に貢献している。
 生産者の高齢化や気象条件の悪化等で、依然として産地の維持が困難な状況ではあるが、近年では徳島県立農業大学校で生産・商品開発が行われたり、新規生産者の掘り起こしもあり、栽培に取り組みたいという若手生産者も現れ、伝統野菜を次代へ繋げる動きも出始めている。

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地元小学校での栽培実習

栽培方法

 標高の高い場所で栽培しやすく、孫づるに実がたくさんなる性質があるので脇芽を伸ばすことにより、7月上旬から秋の遅くまで収穫可能である。4~7月にポット育苗し、5~8月に定植する。定植後約1カ月で開花、その後約2週間で収穫できるようになる。地元では高さ約20㎝、幅約60㎝の畝に支柱を立ててネットを張り、誘引する栽培管理が行われている。肥培管理や防除作業は一般的なキュウリと同様に行う。
 自家採種のため、何本かは収穫せず実をならしたまま黄色になるまで置き、種とりを行い、次作に取っておく。

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美馬太きゅうりの栽培風景

食べ方

 美馬市の伝統料理として「冷や汁」がある。美馬太きゅうりは皮をむき、縦半分に切ってから種を取り除き、薄くスライスして塩もみしておく。しんなりしてきたら洗い流して水を切り、冷やしただし汁に入れ、味噌を加え、よく冷やしてから食べる。梅肉やちりめんを入れてもおいしく、地元で食べられる夏の逸品である。
 煮ても炒めてもおいしいので、ハヤシライスや酢豚に入れても相性がよく、和洋中どんな料理にも合う伝統野菜である。

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美馬太きゅうりの「冷や汁」

執筆者
村木朋美
徳島県美馬農業支援センター 普及指導員

●月刊「技術と普及」令和元年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載