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白いちご新品種'ミルキーベリー(品種名:栃木iW1号)'の育成

2020年03月23日

●育成の背景および目的
 農業関係者や観光業、飲食業、食品製造業などの関連産業から、新たな需要を喚起する新規性のあるいちご品種の開発が求められています。そこで、栃木県産のいちごの魅力向上と関連商品の多様化を目的として、大果で食味の良い白いちごを育成しました。


●育成の経過
 果皮、果肉ともに白色で硬い「和田はつ恋実生系統」を種子親、淡赤色で良食味の系統「09-52-1」を花粉親として交配を行いました。得られた実生から選抜を重ね、目標に達した1系統を平成30年1月に「栃木iW1号」として品種登録出願し、4月に品種登録出願公表されました。また、令和元年10月に名称(商標名)が発表され「ミルキーベリー」となりました。


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左 :果実外観。ミルキーベリー(左)ととちおとめ(右)
右 :ミルキーベリーの果実外観

●特性の概要
 草姿は開張性で、生育は「とちおとめ」並です。「とちおとめ」と比較し、頂花房の着果数はやや少なく、大果で収量性に優れます。
 果皮色は白みの強い黄白色、果肉は白色で、果形は円錐形です。果実品質は、糖度は「とちおとめ」並ですが、酸度はやや低いので糖酸比が高く、食味は良好です。肉質は緻密で、果皮硬度は「とちおとめ」並です。
 未熟果は果皮、種子色ともに緑白色ですが、熟度が進むにつれて緑色が薄くなり、陽光面において果皮色は黄白色、種子は赤色に着色が進みます。また、暖候期になると果皮が桃色に着色します。収穫適期は果皮色の色味と、種子色の着色程度で総合的に判断します。


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ミルキーベリーの草姿


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ミルキーベリーの果実表面の経時的変化


●栽培上の留意点
 暖候期以降、陽光面が桃色に着色する果実の発生がみられます。また、栽培中にできるオセやスレの部分が黄褐色へ変色するため、栽培時はマルチ上に果実マットを敷くことが望まれます。 主に2次腋花房以降の果実で先端障害果が発生する傾向がみられます。
 なお、2020年3月時点で県外の許諾は行っておりません。

 今後、「ミルキーベリー」は観光いちご園や直売所で、新たなアイテムとして活用が期待されています。


生育および収量(2018年)
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注.可販果は7g以上の果実とした


果実特性(2018年)
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執筆者
栃木県農業試験場  
いちご研究所
鶴見 理沙