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金糸瓜(きんしうり) -金色の糸状にほぐれることから名づけられた能登伝統野菜

2019年05月21日

特徴と由来

●石川県七尾鹿島地区

 19世紀末、中国から導入された「覚糸(かくし)うり」が「金糸うり」「そうめんうり」「なますうり」の名前で各地に散在して栽培され始めたと言われています。ウリ科カボチャ属ペポ種に属し、原産はアメリカ大陸です。学名:Cucurbita pepo L、英名:Spaghetti squash。長さ約20~30cmの長楕円形であり、果皮は鮮やかな黄色で、熟した果実を輪切りにしてゆでると果肉がほぐれて糸状になります。まるで手品のように楽しい野菜で、ほぐれた糸状の繊維はみずみずしく、シャキシャキとした食感があります。
 七尾鹿島地区でいつ頃から栽培が始まったか定かではありませんが、浄土真宗の重要な行事である報恩講料理(仏事料理)として古くから地域に定着しています。日本へは「明治後期か大正初期に中国から導入された」と農業技術体系に書かれています。今では、自家用野菜として広く栽培されており、平成19年には「能登野菜」の一つとして認定されています(能登野菜は16品目認定)。

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鮮やかな果皮の「金糸瓜」

産地の動向

 昭和40年代後半から50年代前半にかけて、県、JA、市町等関係機関による指導のもと、旧鹿島町(現中能登町)の水稲農家が、それまで家庭菜園で栽培していた「金糸瓜」を水田転換作物として本格導入しました。当時、農家6戸で約50aを生産し、地元の七尾市公設地方卸売市場と直売所に販売しました。現在では、農家16戸、栽培面積約1.2haで9t生産されています。おもに自家用として食されていますが、JA直売店や関西の卸売市場へも出荷されています。
 さらに地元では加工品として、かす漬けやみそ漬け、レトルトカレー等に商品化され、JA直売店などで販売されています。

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糸状にほぐした「金糸瓜」

栽培方法

 4月に播種または定植し、本葉6~7枚で摘心、子づるを6本仕立てとします。苗でも直播でも栽培が可能です。1株あたり6~7果収穫します。病害虫は少なく、うどんこ病が発生する程度です。生育が旺盛なため、土質により肥料の量を加減する必要があります。収穫期は7~8月頃で、開花後30~35日を目安とします。

食べ方

 「金糸瓜」には、ナトリウムの取り過ぎによる高血圧、脱力感、食欲不振などを防ぐとされるカリウムが多く含まれています。カロリーがほとんどなく、約90%が水分なので、パスタなど麺の替わりとしてダイエット食にもなります。
 ほぐしたものは、酢の物、和え物が一般的ですが、「金糸瓜」を麺に見立てた焼きそば、パスタなどにも利用されます。また、ほぐさずに一口大でカットしたものをバターで焼いてもおいしいですが、果皮が硬いことから、輪切りにするのが困難であるという欠点があります。

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一般的な食べ方である酢の物

執筆者
松原幸佳
石川県中能登農林総合事務所農業振興部 普及指導員

●月刊「技術と普及」平成30年1月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載