提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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シャクヤク(ボタン科)

2018年09月14日

  • (植物学名)Paeonia lactiflora Pallas
  • (生薬名)シャクヤク(芍薬)
  • (利用部位)根

分布、主な産地

 中国東北部、東シベリア、沿海州、モンゴル、朝鮮半島に野生。
 園芸植物として生きた植物の日本への伝来を平安時代とする説や室町時代とする説がありますが、薬用を目的に導入された時期は判然としていません。
 薬用として本種の栽培が定着したのは江戸時代末期と考えられ、現在、奈良、富山、長野、群馬、新潟、北海道で生産されますが、その量はわずかであり、日本で使用される生薬の多くは中国(四川、浙江、安徽)からの輸入品です。
 奈良県大和地方では「ボンテン」と呼ばれている重弁白花青茎種が古くから薬用に栽培され、今日まで伝承されています。薬用品種として "北宰相"、"べにしずか"があります。

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シャクヤクの花

 また、ヨーロッパに渡って育成された後、園芸用、切り花用として日本に輸入された品種群にはオランダシャクヤク P. officinalis L.(ヨーロッパ西南部原産)との交配種が混じっていることが考えられ、薬用種としては好ましくありません。
 なお、日本に野生する同属植物のヤマシャクヤクP. japaonica Miyabe et Takedaやベニバナヤマシャクヤク P. obovata Maxim.は絶滅危惧種であり生薬としては使用されません。

効用、用途等

 生薬シャクヤクは特異なにおいがあり、初めわずかに甘く、後に渋くてわずかに苦い味がします。
 第17改正日本薬局方では、ペオニフロリンを2.0%以上含むことが規定されています。

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 鎮痛、鎮けい、消炎、排膿作用があり、婦人病や冷え性に処方される漢方薬である当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、四物湯(しもつとう)、七物降下湯(しちもつこうかとう)など多くの漢方処方に使用される他、医薬品原料として利用されています。

執筆者
医薬基盤・健康・栄養研究所薬用植物資源研究センター 客員研究員 柴田敏郎

●月刊「技術と普及」平成29年4月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載