提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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ナガイモにおけるマルチローターによる薬剤散布試験

2018年09月12日

背景とねらい
 青森県は出荷量日本一(平成28年産)のナガイモ産地です。生産現場から、省力化技術の一つとしてマルチローター(ドローン)を活用した防除が期待されていますが、ナガイモでの知見は全くありません。そこで、無人ヘリ登録のある薬剤を使って、ナガイモの主要病害虫に対するマルチローターによる薬剤散布の防除効果を検討しました。


試験の概要
 試験は、平成29年度に行い、マルチローター区とブームスプレーヤー区(慣行区)を設置し、参考として場内の無防除ほ場と比較しました。薬剤は両区ともナガイモに登録のある3剤を使用しました。


表1 試験区の構成
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圃場の概要

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ナガイモコガ幼虫による食害(左)と葉渋病の発病状況(右)


 調査の結果、ナガイモコガ幼虫による葉の食害は両区とも少なく推移し、葉渋病は両区とも発生が認められませんでした。無防除ほ場ではナガイモコガ幼虫による食害も葉渋病の発生も認められたことから、マルチローター区、ブームスプレーヤー区とも同等の防除効果を得られたと判断しました。
 散布時間は両区で同程度でしたが、散布液量はマルチローター区がブームスプレーヤー区の約2.4%となりました。薬剤の付着状況については、マルチローター区は部位によりバラツキがみられたものの下位葉、葉裏でも付着を確認できました。


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茎葉の繁茂状況 から7月24日、8月7日、8月21日


散布時の状況
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マルチローターによる散布の様子 benri_movie1.jpg(←クリックで動画を再生)


表2 散布時間と散布量
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マルチローター区の薬剤の付着状況
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特徴とメリット
 慣行のブームスプレーヤー等による防除に比べ、簡単に持ち運べて降雨後でもすぐに防除が可能で、散布水量も大幅に少なくて済みます。


今後の課題
 同一ほ場内に無処理区を設置して、防除効果を再確認する必要があります。また、飛行高度と散布幅の関係やドリフトの状況などマルチローターのナガイモでの散布特性も把握する必要があります。そして、現在、無人ヘリ登録のある薬剤が3剤しかないことから、普及のためには農薬の登録拡大が何よりも不可欠です。

執筆者
地方独立行政法人青森県産業技術センター
野菜研究所病虫部
新藤潤一