提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

注目の農業技術



'栗きんとん'の加工に適するクリ新品種「えな宝来」、「えな宝月」

2017年07月19日

育成の背景
 岐阜県では、恵那地域を中心におもに和菓子原料向けにクリ生産が行われています。
 こうした中、主用途である銘菓「栗きんとん」の販売開始(9月上旬)にあわせた8月下旬から収穫できる品質・収量性の優れる極早生品種が求められていました。また、早生基幹品種「丹沢」と中生基幹品種「筑波」の間に収穫でき、従来の補完品種「国見」よりも加工に適する品種も求められていました。
 そこで、これらのニーズに応えられる、高品質で多収性の県オリジナル品種を育成しました。

201707_kuri_zu1.jpg
クリ時期別出荷量と新品種の関係

  
育成の経過
<えな宝来> <えな宝月>
●極早生品種「胞衣」と早生品種「丹沢」を平成14年に人工交配して得られた実生の中から選抜しました。
●平成26年3月に品種登録出願し、平成28年3月に品種登録されました(第24746号)。
●早生品種「丹沢」との混植園で採種した中生品種「筑波」の実生を平成9年に播種して得られた実生の中から選抜しました。
●平成26年3月に品種登録出願し、平成28年3月に品種登録されました(第24747号)。
201707_kuri_1.jpg  201707_kuri_2.jpg   

品種特性
<えな宝来> <えな宝月>
●育成地(中津川市)では、「丹沢」より10日程度早く収穫できる極早生品種で、9月上旬の栗きんとん販売開始にあわせた加工向け出荷が可能です。
●1果重は、19.9gで極早生品種としては大きく、収量性も優れます。
●蒸した時の果肉色は明るい黄色、肉質はやや粉質で、「栗きんとん」加工に適します。
●農研機構果樹研育成の品種「ぽろたん」と同じように、加熱すると容易に渋皮が剥皮できます。
●育成地(中津川市)では、9月中旬に収穫できる早生品種で、「丹沢」と「筑波」の収穫の端境期を埋めることができます。
●1果重は、20.5gで同時期の「大峰」よりやや大きく、果実は揃いが良く、不良果が少なく収量性に優れます。
●蒸した時の果肉色は濃い黄色、肉質は粉質で風味があり食味が良く、「栗きんとん」加工適性が非常に優れます。
201707_kuri_3.jpg
渋皮がむける様子
201707_kuri_4.jpg
栗きんとん試作品


表 「えな宝来」、「えな宝月」の生育期
201707_kuri_hyo1.jpg
(平成24~28年の5年間の平均値)

表 「えな宝来」、「えな宝月」の収量性、果実特性及び品質
201707_kuri_hyo2.jpg
(平成24~28年の5年間の平均値)

栽培上の留意点
1.両品種の導入により、出荷端境期が解消され、安定供給と収穫労力分散が期待できます。
2.「えな宝来」は、加熱すると渋皮がむけるため、焼き栗用途として利用できます。
3.両品種を利用し、作業性やクリシギゾウムシなど害虫の適期防除の観点から、極早生~早生品種群、中生~晩生品種群など、収穫期ごとにほ場を分けた植栽を行うと良いです。
4.当面、栽培可能地域が岐阜県内に限定されています。

201707_kuri_zu2.jpg

普及状況と今後の見込み
 ここ3年間で、両品種合わせ約3,200本(8ha相当)が植栽されました。将来的には10,000本(25ha)の植栽を見込んでいます。

執筆者
磯村秀昭
岐阜県中山間農業研究所中津川支所