提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ

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種から育てるイチゴ! 種子繁殖型品種「よつぼし」

2016年09月26日

種子繁殖型イチゴ品種の誕生
 従来のイチゴは、ランナーと呼ばれるクローンで株分け増殖する栄養繁殖の作物です。これに対し、日本で2番目、実用品種としては初となる、種から育てるニュータイプのイチゴを、三重県、香川県、千葉県と九州沖縄農業研究センターが共同で開発しました。4機関が協力し1317組もの交配組合せを試した結果、最も優れていたのが「よつぼし」で、この品種は、三重県の「三重母本1号」を母親品種に、香川県の「A8S4-147」を父親品種とするF1品種です。


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「よつぼし」の系統図


「よつぼし」の特徴
(1)種から育てるので増殖率が抜群に高くなります。従来の栄養繁殖品種では、前年から親株を準備し、春から夏にランナーで増やしていましたが、「よつぼし」なら、必要な数の種苗を購入することができます。


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「よつぼし」の種子(約3000粒)


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「よつぼし」のセル苗(406穴)


(2)従来の栄養繁殖品種のように、親株から子株に病害虫やウィルスが伝染することがありません。
(3)かなりの早生性品種で、ポット育苗の促成栽培の場合、9月中旬定植11月下旬収穫が可能です。また、24時間日長の長日条件で花芽を分化しやすい長日性もあわせ持っています。
(4)鮮紅色で形の良いきれいな果実です。糖度、酸度ともに高く、風味のある濃厚な食味です。


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「よつぼし」の果実断面


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「よつぼし」の果実


栽培のコツと注意点
 セル苗を購入してポットに移植・育苗する「二次育苗法」と、セル苗を直接本圃に定植する「本圃直接定植法」があります。「二次育苗法」は従来の栽培方法に近く安定し、「本圃直接定植法」は大幅な省力化になります。どちらの方法も、株が小さいうちは花芽が付かないので、セル苗を植えた後はストレスなく大きな株に育てることが重要です。また、最初は病害虫感染リスクが低くても、二次育苗中、あるいは定植後に病害虫に感染するリスクは従来品種と変わりません。十分な防除が必要です。


促成栽培の作型比較(上:従来の品種、中:「よつぼし」の二次育苗法、下」「よつぼし」の本圃直接定植法
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種苗の入手方法
 現在、種苗の供給量が限られるため、「種子繁殖型イチゴ研究会」の会員優先で種苗を販売しています。詳しくは「種子繁殖型イチゴ研究会」にお問い合わせください。種苗生産が軌道に乗れば、全国の生産者に制限なく購入いただける予定です。


執筆者
三重県農業研究所 野菜園芸研究課
森 利樹