長門ゆずきち-まろやかな酸味で果汁が多く、さまざまな料理と相性がよい
2016年03月24日
特徴
「長門ゆずきち」は、山口県萩市田万川地域で古くから栽培されてきた香酸カンキツです。果実はゴルフボールよりやや大きめで緑が美しく、露地栽培で8月中旬から10月上旬まで生果の出荷が行われます。
まろやかな酸味と果汁が多いのが特徴で、さまざまな料理とあわせやすいです。
また、樹勢は強いものの結果樹齢に達するのは早く、耐寒性はユズと同様とされています。
左 :長門ゆずきちの栽培圃場 / 右 :着果状況
食べ方
日本海沿岸では、9月にマンサク(シイラ)が回遊し、刺身を食べますが、醤油に果汁を加えると一層味が引き立つとされ、古くから親しまれてきました。
酢の物はもちろん、醤油とあわせて刺身や焼き魚、唐揚げ、豆腐、肉料理などにもベストマッチ。
加工品としては、県内の業者等により果実酢、ポン酢、ジュース、リキュール、ドレッシング、ゆず胡椒、酢味噌、ジャム、ようかん、ういろう等へ利用され販売されています。
販売の様子
産地の動向
平成10年ごろから、萩市のほか、長門市、下関市でも栽培が拡大し、平成19年に産地の3農協で地域団体商標を取得しました。
現在の栽培面積は7ha、生産量40tとなっており、県果樹農業振興計画でも推進品目に位置づけて生産振興に取り組むこととしています。
1果平均重は約50gと小玉で収穫に労力を要するため、生産者は複合経営の1品目としての位置づけで取り組んでいます。現在、産地で設立が進む地域の集落営農法人の経営の1品目として検討している事例もあります。
出荷量の約3分の1は、生果として県内市場を通じて県内の量販店等で販売されるほか、地元の道の駅等で販売されています。また、出荷量の約3分の2は全農やまぐちを通して加工業者へ出荷されています。
長門市や下関市の産地では、樹冠の拡大とともに生産量の増加が予想されるため、既存の市場や加工業者以外の販路拡大の必要性が高まっています。平成25年9月には、やまぐちブランドに登録され、県内外の消費者、実需者に広くPRし販売促進活動にも取り組んでいます。
原田直
山口県農林総合技術センター技術指導室 主査
●月刊「技術と普及」平成26年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載