キウイフルーツ新型かいよう病の発生と対策
2015年11月25日
平成26年5月から6月にかけて、愛媛県をはじめ7県のキウイフルーツ産地で新型の病原菌によるかいよう病が同時多発的に発生しました。このかいよう病は、従来発生していた病原菌よりも病原性(病気を起こす能力)が高い新系統(Pseudomonas syringae pv. actinidiae biovar 3;Psa3)によるものであることが確認されました。Psa3は2008年にイタリアで初めて発生が確認され、現在ではニュージーランドなど主要な生産国で発生し、大きな問題となっています。
●主な症状
主な症状は、葉の褐色斑点(写真1)、花蕾の褐変、枝や幹から病原菌を含む白色や赤褐色の樹液の漏出(写真2)で、枝や樹の全体が枯死に至ることもあります。
平成27年に入り、新たに6都県で発生が確認されましたが、早いところでは2~3月にかけて発病樹が発見されています。このことから、発病樹の早期発見には2月頃からの観察が重要で、枝や幹からの樹液の漏出(写真3)が良い目印となります。発病が疑われる樹を発見した際は、すみやかに最寄りの関係機関に連絡し、その後の処置についての指示に従ってください。
左上 :写真1 葉の褐色斑点症状
右下 :写真2 病原菌を含む赤褐色の樹液の漏出
写真3 3月に確認された病原菌を含む樹液の漏出(落葉痕から白色の樹液が出ている)
●防除対策
発生地域での防除対策としては、発病部位の切除(症状が主幹部や骨格枝の主幹付近に及んでいる場合には樹の伐採)、休眠期から開花期にかけての銅剤散布などが中心となっています。
剪定作業に用いるハサミ等の器具は、樹ごとに200ppm以上の濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液または70%エタノールを用いて消毒します。そのほか、作業者が発病園地へ立ち入った際には、植物体(残渣も含む)を園外に持ち出さないよう注意するとともに、作業終了時には靴底や作業機械の洗浄・消毒が必要です。
●国や研究機関の取り組み
農林水産省では、平成26年の発生確認当初から防除対策会議や全国調査等を実施し、対策に取り組んでいます。
その一つとして、平成26年度農林水産省農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業により、愛媛県を中核として当面のキウイフルーツ生産のための暫定的な防除技術開発に関する調査研究を実施しました。
その成果として「キウイフルーツかいよう病Psa3系統の当面の防除対応マニュアル(暫定版)」をとりまとめています。本マニュアルには、当面のPsa3防除対応として、ほ場衛生管理、園地モニタリング、耕種的対策、薬剤による防除等に関する情報が記載されておりますので、本病の発生地域において防除の参考にしていただけます。その他、「緊急対策パンフレット」や「果樹園管理・病徴ガイド」(写真4)も作成しています。
これらの成果は、農研機構のホームページでご覧いただけますので、本病蔓延防止や早期発見のための啓発資料としてご活用いただければ幸いです。
執筆者
農研機構 果樹研究所 品種育成・病害虫研究領域
中畝良二