宮城県産のイタリア野菜の定着を目指して
2015年03月16日
宮城県農業・園芸総合研究所では、飲食店などに需要が見込まれる西洋野菜を試験栽培し、宮城県内での生産を目指して、品目の普及活動、生産者への技術提案を行っています。そのひとつとして、宮城県と友好姉妹県であるイタリア・ローマ県とのつながりを背景に(伊達政宗の家臣、支倉常長がローマ法王に謁見したという歴史的な背景がある)、日本ではまだあまり知られていない魅力的なイタリア野菜を全国に発信しようという取り組みを県内産地とともに行っています。
その先駆けとなった野菜「プンタレッラ」は、2006年より宮城県南部に位置する丸森町で、生産者8名、栽培面積10aから生産が開始されました。JAみやぎ仙南とともに産地発展のために試行錯誤し、2009年にはJAみやぎ仙南西洋野菜研究会が設立され、現在まで生産を続けています。
西洋野菜研究会では、プンタレッラ優良系統を用いることによる品質の良さ、国産ならではの鮮度の良さを売りに、宮城県内から首都圏、関西方面に至るまでの専門料理店向けに需要を掘り起こし、実需者からの好評を得ています。
現地生産については、宮城県大河原農業改良普及センターの生産普及指導に支えられ、2014年までに西洋野菜研究会員は20名に拡大しています。
また、プンタレッラの生産定着にともない、実需者からは他のイタリア野菜の出荷が要望されるようになりました。
当研究所ではこれまで約20種類の品目について試験栽培を行い、有望な品目に関する栽培技術を体系化して提案しました。現在西洋野菜研究会では、販売品目は秋冬作物を中心に8品目に増加しています。
ここでは、そのうちのいくつかご紹介します。
「プンタレッラ」
プンタレッラは、主にローマ近郊で10月下旬~3月初旬にかけて収穫されるローマの伝統野菜です。キク科キクニガナ属チコリーの一種、カタローニャという葉物野菜の株の中心から盛り上がってくる若芽の部分が「プンタレッラ(プンタレッレ)」です。その形状から「プンタ(とがった)・レッラ(愛らしい)」と呼ばれます。茎の中は中空で、シャキシャキの食感とほろ苦さはくせになる「大人の味」。サラダやリゾット、フリットなどとして食されます。
宮城県農業・園芸総合研究所では、イタリア由来の優良2系統について、栽培技術を確立し、現在までの産地形成のために技術移転をしてきました。
「タルディーボ」
主にイタリアのヴェネト州で生産され、冬に出荷される高級野菜です。キク科キクニガナ属レッドチコリの中でも、細身の葉と赤白のコントラストが特別に美しく、食べるとほろ苦さの中にほのかな甘さを感じるのが特徴です。ほとんどがサラダとして食されますが、イタリアでは栽培に手がかかる高級野菜として、創作料理が次々作られるほど人気があります。
宮城県内の平野部でも生産できるように技術開発し、2010年から現地生産しています。主な出荷時期は1月上旬~3月上旬です。
「トレビス」
タルディーボと同じキク科レッドチコリーの一種で、日本国内では比較的知られているイタリア野菜です。主にはサラダ野菜として需要があり、他にリゾットなどの料理にも使われます。タルディーボよりも出荷期間の幅が広く、宮城県では5~7月、10~12月に主に出荷できます。
「フィノッキオ」
セリ科フェンネルの仲間で、株元が白く丸く太り、野菜としてサラダなどに利用します。独特の香りと甘みがあります。宮城県では5~6月、10~12月に出荷されます。
「カリフラワーロマネスコ」
尖った花芽がらせん状に渦巻きして花蕾になる、黄緑色のインパクトの強いカリフラワーです。カリフラワーとしては晩生のタイプであり、しっかりした食感と甘みが強いのが特徴です。宮城県では10~1月が出荷時期になります。
この他にも「カーボロ・ネロ」(結球しない黒キャベツ)、「チーマ・ディ・ラーパ」(カブの仲間、菜花のように若芽、花芽を食べる)、「カラフルニンジン」(黄色、紫、白など)、「花ズッキーニ」、「クッキングトマト」などについて栽培技術を確立し、いくつかは西洋野菜研究会でも生産されています。
これらのイタリア野菜は、宮城県内各地にも徐々に生産が広がりつつあり、「トレビス」を1ha規模で生産する企業、「タルディーボ」を年間1万株生産し、「フィノッキオ」、「カリフラワーロマネスコ」、「バジル」等を同時に手がける生産者なども出てきています。
現状の宮城県産イタリア野菜は、業務用の出荷がほとんどですが、宮城県農業・園芸総合研究所では引き続き栽培方法の開発や品目の普及に努め、いずれ一般家庭の食卓にも並ぶようになってほしいと考えています。
執筆者
宮城県農業・園芸総合研究所
澤里昭寿
(関連サイト)
▼イタリア野菜を宮城から 「プンタレッラ」と「タルディーボ」