端境期出荷に適し、貯蔵性後も品質のよいカボチャ新品種「ジェジェJ」
2014年11月26日
育成の背景
海外から輸入されるカボチャの量は毎年約10万tで、輸入量が多い野菜です。国内産のカボチャは、初夏~晩秋期までの供給を担っていますが、端境期である冬から春期には8~9割が外国産で占められています。量販店、消費者、実需者からは、端境期においても国内産のカボチャを求める声が強くあります。
そこで、端境期における国内産カボチャの周年供給を目指すため、貯蔵性がよく品質のよい品種の開発に取り組みました。
育成の経過
北海道農業研究センターで開発した生育初期につるが伸びにくく、株元近くに果実が着きやすい特性をもつ短節間系統「北海6号」と(株)渡辺採種場が開発した、つる性で貯蔵性の高い系統'LOH'との間で交配し、F1(TC54)系統を得ました。植物体特性、収量性、貯蔵後の品質等の優秀性が認められたことから、2013年に「ジェジェJ」の名前で新品種登録出願しました。
品種の特性
「ジェジェJ」は、生育初期において主枝(つる)の節間が詰まり、短節間性を示します(表1、図2)。生育中期以降は徐々に節間が伸びてつる性になります。短節間で側枝が少なく株元近くに果実がなりやすいことから、整枝・誘引、収穫作業の省力化が図られ、密植栽培が可能です。開花時期は「えびす」とほぼ同じです。果形は扁円形であり、収穫直後の果皮の地色は濃緑で、緑色のすじの模様があります。
果実重量は2kg程度です(表2)。
収量は「えびす」および「雪化粧」以上であり、多収です。貯蔵2カ月後の腐敗果率は低く、貯蔵3カ月後では「雪化粧」に劣りますが、「えびす」と同等以上です。
貯蔵3カ月後における果皮色は「えびす」よりも緑色が濃く、果肉色は赤味が強まり橙黄~橙となります(図3)。
肉質は粉質性が強く、乾物率およびBrix(糖度)は高い特徴があります。
図3 貯蔵3カ月後の果実。「ジェジェJ」(左)と「えびす」(右)
栽培上の留意点
本州、九州地域等の端境期出荷に向けた抑制栽培、北海道などの春播き露地栽培に適しています。
密植栽培(畝幅150~200cm、株間50~60cm。または、畝幅300cm株間50cm2条植え)を行います。着果後は葉の枯れ上がりによる日焼けが生じやすいので、生育後半まで茎葉を維持する必要があります(ロング肥料の活用、うどんこ病対策)。貯蔵2カ月以降は腐敗果が発生しやすくなります。
種子は(株)渡辺採種場(電話0229-33-2221)から販売されています。
執筆者
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
北海道農業研究センター 水田作研究領域 野菜育種グループ
杉山慶太