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花作大根-漬物のパリパリ感がたまらない幻のダイコン

2014年06月09日

特徴と由来

●栽培地域 :山形県長井市花作地区

 「花作(はなつくり)大根」は、山形県長井市花作地区で、長期保存できる漬物用として伝えられてきた小さなダイコンです。根部の形は円筒形または徳利形、大きさは一般のダイコンの3分の1程度です。肉質がしっかりしており、漬物にした時でもパリパリした食感を持つことが第一の特徴です。苦味があり、生食用には適しませんが甘みがあります。

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花作大根

 江戸時代に米沢藩上杉家の殿様から「花作大根」の名称を授かったと伝えられています。
 かつては県南部の置賜地域一円で栽培されていましたが、生産性の低さや食生活の変化などから栽培面積が減少しました。
 今では、長井市花作地区周辺でしか栽培されていない"幻のダイコン"です。

栽培方法

dento_daikon_yamagata2.jpg 播種適期は8月下旬~9月上旬。基肥量は窒素成分で10a当たり3~5kg度が目安です。8月20日以前の播種と一般的なダイコンの施肥量では裂根が発生しやすくなります。
 その他の管理は、一般的なダイコンとほぼ同じで、10月下旬~11月中旬に収穫します。

 なお、長年の栽培による種子交雑のため、形質にバラツキがあったことから、7年前から採種圃場を設置し、優良系統の選抜、形質の安定化を図ったことで、揃いは格段に良くなっています。
右 :栽培講習会(播種作業)

食べ方

 漬物としての利用が主になります。
 一般的には、収穫後に塩漬けして、辛味、苦味を取った後、普通のダイコンの漬物が少なくなる春に塩抜きして、味噌や粕などさまざまな味に漬け直し、食卓に並びます。ほとんどが自家消費でしたが、一部は加工品として地元直売施設などで販売されています。

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花作大根のみそ漬けと粕漬け

 現在は、生産者グループの発案により、「紅花入り甘酢漬け」「わさび漬け」「千枚漬け」など即席漬けのレシピ開発や商品化が進むとともに、「大根おろし」によるそばの薬味としての利用を検討しています。

産地の動向

 「花作大根」は、わずかな生産者が種子を保存しながら栽培を続けてきた伝統野菜です。
 平成14年、地区の生産者が「ねえてぶ花作大根」という生産者グループを設立し、種子の配布、栽培および漬け物の講習会を開催しながら復活に取り組みました。
 平成17年には、スローフード協会本部(イタリア)から食の世界遺産「味の箱舟」にも認定され、「全国大根サミット」や「スローフードフェア」でのPR活動により認知度はしだいに高まっています。
 生産者はまだ少ない状況ですが、栽培は着実に定着しています。産地では、今後とも形質の安定化、栽培技術の向上および加工商品開発に取り組んでいこうと意気盛んです。

執筆者
赤間吉広
山形県西置賜農業技術普及課 主任専門普及指導員

●月刊「技術と普及」平成24年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載