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米良糸巻大根-山の焼畑(コバ)で育まれた宮崎の伝統野菜

2014年04月18日

由来と特徴

●栽培地域:宮崎県児湯郡西米良村

 西米良村で古くから作り続けられている固有のダイコンです。
 根に赤紫色の糸を巻き付けたような縞模様が入るところから「糸巻大根」と呼ばれますが、地元では「米良糸巻大根」「米良大根」と呼ばれます。地色が白いものと赤いものとがあり、形状は自家採種されているものでは丸~紡錘~長とさまざまです。糖度が普通のダイコンに比べて2度から3度高く、肉質が緻密でやわらかいのが特徴です。

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米良糸巻大根 (提供:宮崎県西米良村(無断転載を禁ず))

 「米良糸巻大根」の歴史は古く、16世紀初頭には栽培されていたと考えられていることから、500年以上も作り継がれてきている伝統野菜と言えます。
 西米良村は96%が山林原野であり田畑が非常に少ないため、古くから焼畑(コバ)で栽培される糸巻大根は、粟や稗とともに貴重な食糧でした。
 現在でも、その特長を活かした煮物・なます・切り干しなどに幅広く利用されていますが、その中でも切り干しは昔「米1升と切り干し1升が交換できる」ほど高価なものだったようです。
 現在は普通畑で作られることが多いですが、焼畑で栽培された物は特に甘みが強いと言われており、まさに山間地帯の西米良村の風土に適した野菜です。

栽培方法

 化学肥料を使うと苦みが出ると言われており、有機質肥料主体の栽培を行っていますが、現在でも焼畑にこだわって無肥料で作っているところもあります(簡易焼畑)。
 栽培は9月から10月上旬に播種する作型が主体で、11月から2月に収穫されます。
 畑で栽培する場合は、通常のダイコンと同様に1条・3粒播きの栽培が多いですが、焼畑の場合はバラ播きで覆土も特に行いません。

食べ方

 生で食べても美味しく、昔は山仕事の際に焼畑のダイコンを抜いて自家製の味噌をつけて食べるのが楽しみだったそうです。
 今でも生のまま大きく切って味噌で食べたり、大根おろしやなますにします。赤系も内部は白ですが、酢を加えると赤く染まるので、なますにする時には白に赤を少し混ぜると色合い的にもよくなります。
 煮ものにすると味が染みるのが早く形崩れしにくいので、猪汁や煮しめ、おでんの具材には欠かせないものです。
 また、千切りや切り干しなどの加工品にも利用しています。

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栽培風景 (提供:宮崎県西米良村(無断転載を禁ず))

産地の動向

 形状が雑多なため商品化が難しく、近年の猿による被害もあり作付面積がなかなか拡大できないことから、村内消費が中心で、村外にはなかなか出回らない状況にありました。
 現在、宮崎県総合農業試験場での選抜育種により形状の安定した優良系統が育成され、また、最近では、地元の加工グループ「いとまき倶楽部」による漬け物などの加工品の開発・販売も始められるなど、環境が整ってきており、村外への出荷等も含めた作付面積の拡大・高付加価値化を目指しています。
 平成21年10月30日、西米良村固有の「米良糸巻大根」として商標登録されています。

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(提供:宮崎県西米良村(無断転載を禁ず))

執筆者
米良典雄
宮崎県児湯農林振興局西米良駐在所 主任

●月刊「技術と普及」平成24年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載