倒伏・いもち病に強く、高品質・良食味な水稲新品種「天のつぶ」
2013年01月16日
研究の背景とねらい
福島県では、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」を中心に、高品質・良食味米が生産されてきました。一方で、近年は、中食・外食産業及び消費者から、おいしくて、値ごろ感のある米が要望されており、こうしたニーズに対応できる品種が求められています。
このため、本県では、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」より栽培しやすく、収量が安定し、これらに匹敵する高品質・良食味の新品種「天のつぶ」を育成し、平成23年から一般栽培を開始しました。
育成の経過
「天のつぶ」は、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」の中間の熟期で、耐倒伏性が強く、玄米品質が良い良食味品種の育成を目的として、「奥羽357号」を母に、「越南159号」を父として人工交配を行いました。その後、系統選抜及び特性検定試験、生産力検定予備試験を行い、平成7年から「福島9号」の系統名を付与し、水稲奨励品種決定基本調査、水稲有望系統現地適応性試験を行い、平成22年に福島県の奨励品種として採用されました。
「天のつぶ」は、穂が出るときに天に向かってまっすぐに伸びる力強い姿、天の恵みを受けて豊かに稔る一粒一粒、しっかりとした食感をイメージして命名されました。
品種の特性
(1)出穂期は、「ひとめぼれ」より2日程度遅く、「コシヒカリ」より5日程度早くなっています。また、成熟期は、「ひとめぼれ」より3日程度遅く、「コシヒカリ」より7日程度早くなっています。
(2)稈長は、「ひとめぼれ」や「コシヒカリ」より短いため倒れにくく、穂いもちに対しては、「ひとめぼれ」や「コシヒカリ」より強い品種です。
(3)玄米千粒重は、「ひとめぼれ」や「コシヒカリ」よりやや重く、玄米の粒厚分布は2.1mm以上が8割近くを占め、玄米品質は、乳白粒等の白未熟の発生が少なく良質です。
(4)玄米のタンパク質含有量は、「ひとめぼれ」「コシヒカリ」並、白米のアミロース含有量は「ひとめぼれ」並で、「コシヒカリ」より高くなっています。食味官能試験では、 「ひとめぼれ」並の良食味と評価されています。
具体的な「天のつぶ」の品種特性等は表1、写真1のとおりです。
生産振興及び販売PR
「天のつぶ」は、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」に次ぐ本県の主要品種として位置づけ、当面、6,000haを目標に、作付け拡大を推進しています。
栽培管理については、検査等級が1等で、玄米タンパク質含有率6.4%以下(水分15%換算)の品質を目標に地方別生育目標値(表2)を設定し、高品質・良食味米の生産に取り組んでいます。
また、販売・PR活動は、うつくしまライシーホワイト(※)による店頭キャンペーンや、首都圏の米穀卸等に対する試食求評の実施、さらには「がんばろう ふくしま!」運動との連携により取り組んでいます。
なお、現在のところ、種子の供給体制等の面から、福島県内の生産者に限定した作付けとなっています。
※うつくしまライシーホワイト:ふくしま米のPRと米消費拡大のため、県内外で活動するキャンペーンクルー
執筆者
福島県農業総合センター
作物園芸部 稲作科長
佐藤 誠