多収で高温に強い晩生の早期水稲新品種「夏の笑み」
2012年12月10日
研究の背景とねらい
宮崎県は日本一の早期水稲栽培面積を誇っており、「コシヒカリ」を主力品種として作付けが行われていますが、「コシヒカリ」にかたよった作付けになっているため、作業の競合や気象災害・病害虫被害の拡大等が懸念されています。
この問題を解決すべく、平成14年度に作期分散を目的に、晩生の早期水稲品種「さきひかり」を奨励品種として導入しましたが、玄米品質が低く、近年は年々作付面積が減少しており、「さきひかり」に代わる晩生の品種が求められていました。
そこで、多収で品質が良いこと、さらには倒伏に強く、近年問題になっている高温にも強い「夏の笑み」が育成されました。
育成の経過
2001年に高温に強い「西南115号」と食味が優れる「南海128号」を交配し、その後代の収量性・品質・耐倒伏性・食味等を重視しながら選抜し、2008年に「宮崎45号」を選定しました。同年から現地試験を行い、成績が良好であったことから2011年度に奨励品種に採用され、「夏の笑み」と名付けられました。
品種の特徴
「夏の笑み」は収穫時期が「コシヒカリ」よりも11日遅いため作期分散が可能です。また、稈長が「コシヒカリ」よりも明らかに短く、稈もしっかりしているため、倒伏に強い品種です。
「夏の笑み」の株の様子
左から 夏の笑み、コシヒカリ、さきひかり
収量は「コシヒカリ」よりも15%以上多収であるため、収穫が遅れて米価が下がり収入が減少する分を収量でカバーすることができます。
玄米品質は「さきひかり」よりも明らかに良く、「コシヒカリ」に近い良質米で、食味は粘りが強く「コシヒカリ」並み以上の極良食味です。また、高温に強いため、登熟期間中に高温で白く濁る粒(白未熟粒)の発生が少ないという特徴もあります。
一方で、病害虫に対する強さは「コシヒカリ」と同程度ですので、問題となる「いもち病」やその他病害虫の防除は「コシヒカリ」と同様に、しっかり行う必要があります。
「夏の笑み」の玄米および籾の様子
左から 夏の笑み、コシヒカリ、さきひかり
研究成果の活用
「夏の笑み」は2012年産から一般栽培が始まり、全ての「さきひかり」および「コシヒカリ」の一部に替えて普及予定です。また、収量が多いことから、近年国産需要の伸びている加工用米への活用も検討されています。
なお、種子の申し込みは宮崎県内の生産者に限定していますので、現在のところ宮崎県以外で作付することはできません。
執筆者
宮崎県総合農業試験場
作物部
松浦聡司