提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


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省力栽培が可能なメロン新品種「フェーリア」

2012年05月07日

●育成の目的
 メロン栽培では、着果の安定性や果実の品質を向上させるため、また、過繁茂による作業性の低下や病害虫の蔓延を防ぐ目的で、側枝の除去等の整枝作業が行われています。この作業には多大な時間と労力が必要で、特に地ばい栽培では、負担の大きいかがんだ姿勢で作業を行うことから、管理作業の省力化が望まれています。

 一方、ほとんどのメロン品種は、両性花型(両性花と雄花を付けるタイプ)ですが、両性花にはめしべとおしべの両方が存在することから、自然に着果しやすく、余分に着果した果実の摘果に労力を要します。それに対し、単性花型(雌花と雄花を付けるタイプ)のメロンは、両性花の代わりに雌花を付けるため、自然着果しにくく、余分な着果(余剰果)を少なくできる特徴があります。
 そこで、整枝作業および余剰果の摘果作業の省力・軽作業化を目的として、側枝の伸長が短く抑えられる短側枝性を持ち、さらに余分な果実の発生を少なくできる単性花型のメロン品種の育成に取り組みました。



メロンの雌花
左から 両性花、雌花、雄花(花弁を取り除いています)


●育成の経過
 1997年から育成を開始しました。短側枝性で単性花型の固定系統「AnSB-4」を種子親とし、うどんこ病レース1に抵抗性を持ち、両性花型の固定系統「AnMP-1」を花粉親とする試交系統は、短側枝性および単性花性で整枝作業の省力性を有することが認められ、その果実品質は実用品種と同等と評価されました。本系統に「フェーリア」と命名し、2011年に品種登録出願(出願番号25784号)しました。



「フェーリア」の果実


●品種特性
 「フェーリア」では、多くの側枝が20cm未満で伸長を停止するため(図1、表1)、短い側枝の除去作業は不要です。整枝・誘引作業に要する時間は、慣行栽培に比べて5割程度短縮できます。「フェーリア」は単性花型であるため、短い側枝を放任した場合でも、自然着果による余剰果の発生は少なく、摘果作業は軽減できます。


20120416melon_fe_zu1.jpg
図1 「フェーリア」の短側枝性



「フェーリア」の側枝
「フェーリア」では、側枝の多くが途中で伸張を停止し、短い


表1 「フェーリア」における省力性の評価および果実特性


 「フェーリア」の果実はやや縦長で、果皮は灰緑色でネットが密に発生します。果肉は淡緑色で、食味に優れます。メロンの重要病害であるうどんこ病(レース1)、つる割病(レース0およびレース2)に対する抵抗性があります。


●栽培上の留意点
 「フェーリア」は省力化が強く求められている地ばい栽培に適します。高温・強光条件では側枝が伸長し、短側枝性が発揮されないことから、生育期間が比較的低温である促成および半促成作型に適します。着果枝より下位節から発生する側枝は、伸長しやすいので早めに摘除し、着果枝および着果枝より上位節から発生する側枝を放任する栽培方法が推奨されます。訪花昆虫による余剰果の発生を減少させるため、交配期間の終了後にはすみやかにミツバチを搬出し、ハウスには防虫ネットの展張をお勧めします。


執筆者
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
野菜茶業研究所 野菜育種・ゲノム研究領域
杉山 充啓