耐暑性インゲンマメ品種「ナリブシ」の育成
2008年04月21日
インゲンマメは暑さに弱く、高温期になると、花は咲くものの、花粉が不稔になるため受精できず、落花(果)して実をつけることができません。
我が国の冬場のインゲンマメ生産は、温暖な気候を利用して沖縄が主産地となっていますが、盛夏期には、本土の高冷地以外では栽培が困難です。
亜熱帯の沖縄県石垣島にある、国際農林水産業研究センター熱帯・島嶼研究拠点は、その気候条件を利用して、耐暑性作物の開発研究を行ってきました。その成果の一つが、耐暑性インゲンマメの育成です。
平成7年に、長さ13~15cmの丸平形で淡緑色の莢をつける耐暑性極強(高温下で多収)のインゲンマメ品種「ハイブシ」を育成しました。「ハイブシ」の優れた耐暑性と食味は高い評価を受けています。
一方、「ハイブシ」と莢の形状が異なる丸形で、長い莢をつける耐暑性の品種も望まれてきました。
そのような中、国際農林水産業研究センター(旧熱帯農業研究センター)は、これまでに海外で収集した、インゲンマメ遺伝資源の特性調査を実施しました。
耐暑性に着目して、当研究センター内の畑で純系選抜し、育成した品種が「ナリブシ」です。インゲンマメの新品種「ナリブシ」は、平成20年3月13日に登録されました(第16451号)。
「ナリブシ」は長い莢を着けますが、その莢の形が、流れ星が尾を引くような形を連想させるため、流れ星を意味する沖縄の言葉「なーりーふし」から命名しました。「ナリ」に実がよく「成る」、の意味も掛けています。
また、「ナリブシ」は、高温下(28.1℃:石垣市の6月の平均気温)でも、160~180kg/a(28,000~34,000本/a)の若莢を収穫することができます。「ハイブシ」より莢が長く、莢の中央部の横断面が丸形です。
さらに、無限つる性で、収穫開始までの日数が50日(高温下ではもう少し早く45日くらいで収穫できます)、完熟種子は黒色です。若莢の糖度(Brix)は4.9で、食味(甘味)はハイブシと同等です。本土の夏場に栽培・収穫するのに適しています。
「ナリブシ」の若莢(a)、莢の横断面(b)と完熟種子(c) バーは1cm
「ナリブシ」は、「ハイブシ」とともに、耐暑性インゲンマメ品種育成の素材としても、今後の利用が期待されています。両品種とも、つる性の生育特性をもち、若莢の色が淡緑色です。
そこで、これらの品種を片親に使い、矮性の品種や濃緑色の莢をつける品種との交配によって、新たな耐暑性品種の育成も進めているところです。
執筆者
国際農林水産業研究センター 熱帯・島嶼研究拠点
江川 宜伸
柏葉 晃一
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