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温暖地向けの良食味もち性大麦品種「もち絹香」

2020年2月 5日

背景とねらい
 大麦に豊富に含まれる食物繊維の一種であるβ-グルカンの機能性が注目され、特にその含量が多いもち性大麦の需要が飛躍的に伸びています。しかし、国内生産だけでは需要を満たすことが出来ず、残念ながら多くを輸入に依存しています。
 安全・安心の観点や品質の面から、国産もち性品種の育成・生産拡大が待望される中、その期待に応えるため、栃木県では温暖地向けの早生でオオムギ縞萎縮ウイルスに抵抗性があり、品質が優れるもち性の二条皮性品種を目指して育種を展開しました。その結果、短稈で栽培しやすく、おいしいもち性品種「もち絹香」を育成しました。


「もち絹香」の特徴
●もち性のアミロースフリー(wax-b遺伝子)で炊飯麦の粘りと歯ごたえが強く、β-グルカン含量は「サチホゴールデン」の1.5倍です。プロアントシアニジンフリー(ant28-494遺伝子)のため、炊飯麦の褐変が極めて少ないです。また、リポキシゲナーゼ-1活性がなく(lox1-2005遺伝子)、炊飯麦の香りが優れます。搗精に要する時間(55%搗精時間)は長いですが、砕粒及び硝子粒の発生は少ないです。精麦の白度及び明度が大きく赤みが小さく優れますが、黄色みがやや強い特徴があります。


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炊飯12時間後のもち絹香(左)とサチホゴールデン(右)


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●成熟期は「サチホゴールデン」よりも1日遅い早生種です。短稈で穂長が短いですが、穂数が多く大粒です。整粒重は下表では「サチホゴールデン」よりもやや少ないですが、多肥栽培では同等のデータが得られています。


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糊熟期の立毛。左からサチホゴールデン、とちのいぶき、もち絹香


●オオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子rym3rym5を有し、ウイルス系統Ⅰ~Ⅴ型に対して抵抗性ですが、ムギ類萎縮ウイルスには罹病するので注意が必要です。また、穂発芽には弱いので、刈遅れないようにしてください。


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「もち絹香」の今後
 栃木県では種子生産を始めており、2020年産で300tの生産を見込んでいます。2020年秋までには栽培法をまとめたマニュアルを策定する予定です。「もち絹香」の普及により、生産収益向上と健康増進の一助となれば幸いです。


(参考)
もち性で良食味の温暖地向け二条大麦新品種「もち絹香」(栃木県ホームページ)


執筆者
加藤常夫
栃木県農業試験場