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大麦を利用したリビングマルチによる害虫抑制効果

2019年6月21日

背景
 施設園芸では、天敵類を活用した生物農薬や各種物理的防除手段など、化学合成農薬だけに頼らない病害虫防除体系(総合的病害虫管理技術=IPM)の普及が拡大しています。しかし、露地園芸では化学合成農薬の代替手段が不足しており、IPMの普及は進んでいないのが現状です。また、化学合成農薬は重要な病害虫防除手段ですが、近年では農薬の効果が低下した病原菌(耐性菌)や害虫(抵抗性害虫)が顕在化し、問題となっています。
 そこで、露地園芸品目(キャベツ、春タマネギ)における総合的病害虫管理技術(IPM)の普及、拡大を目指し、リビングマルチを導入したIPM体系を確立しました。


リビングマルチとは?
 主として栽培する作物の生育中に地表を覆うように同時に生育させる別の植物を指します。リビングマルチ(以下、LM)として利用する植物は、「発芽が容易」、「主作物との栄養競合が少ない」、「雑草化のリスクが少ない」、「斉一性」などの条件が求められます。本成果では大麦(品種:てまいらず)を利用しています。


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キャベツ(左)とタマネギ(右)におけるリビングマルチの活用


リビングマルチの害虫抑制効果
1.キャベツにおいて、大麦をリビングマルチとして導入することにより、モンシロチョウ(アオムシ)、アブラムシ類、ネギアザミウマに対して高い密度抑制効果を示します(図1、2)。また、タマナギンウワバ等のヤガ類に対しても密度抑制効果を示します。


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図1 キャベツ栽培でのリビングマルチ(大麦=LM、以下同様)の有無とモンシロチョウの産卵数


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図2 キャベツ栽培でのリビングマルチ(大麦)の有無とネギアザミウマ寄生数


2.タマネギにおいて、大麦をリビングマルチとして導入することにより、主要害虫であるネギアザミウマに対し、高い密度抑制効果を示します(図3)


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図3 タマネギ栽培でのリビングマルチ(大麦)の有無とネギアザミウマ寄生数


3.リビングマルチの生育が旺盛な場合には、リビングマルチを途中で刈り込むことにより主作物への悪影響を回避できます。刈り込んだ場合にも、害虫抑制効果は刈り込まない場合と同程度に発揮されます(図4)


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図4 タマネギ栽培でのリビングマルチ(大麦)の刈込み有無とネギアザミウマ寄生数


IPM体系の一例:キャベツ
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IPM体系の一例:春タマネギ
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リビングマルチ導入上の注意点
●大麦の播種量は5~10kg/10a(リビングマルチ播種部分)とする。
●LMの播種時期については、定植前後とするが、キャベツで中耕する場合は中耕時とする。
●LM播種後は覆土する(発芽の斉一性と鳥害防止)。
●大麦が作物の草高を超えないように管理する。


執筆者
宮城県農業・園芸総合研究所 園芸環境部 虫害チーム
主任研究員 関根 崇行