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ウラルカンゾウ(マメ科)

2018年9月21日

  • (植物学名)Glycyrrhiza uralensis Fischer
  • (生薬名)カンゾウ(甘草)
  • (利用部位)根、ストロン(匍伏茎)

分布、主な産地

 中国東北部から西北部および華北(内蒙古、寧夏、吉林、遼寧、黒龍江、河北、新疆)、中央アジア、モンゴル、シベリアの乾燥地に分布する多年草。
 日当たりの良いカルシウム質の草原や川岸など砂質地に生えます。自生地の土壌はアルカリ性を示しますが、日本の酸性土壌でも良く生育します。

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ウラルカンゾウの花(左)と果実(右)

 日本に自生はありませんが、平安時代にはすでに国内で栽培されていたことが報告され、それ以前に日本へ導入されたと考えられています。また、江戸時代には山梨県甲州市塩山、福島県会津若松市等で栽培が行われていましたが、現在では株が保存されている程度です。
 現在、国内での商業生産はなく、日本で使われている生薬カンゾウは、すべて中国からの野生品の輸入に依存しています。乱獲により自生地では資源が減少し、環境破壊や砂漠化が助長されることから中国政府は野生資源の採取を厳しく制限し、栽培化を奨励しています。
 本種と同様に使われる種類に地中海沿岸(スペイン、トルコ、エジプト)から小アジア、イラン、ロシア、中国西部にかけて分布するスペインカンゾウ G. glabra L.があります。

効用、用途等

 生薬カンゾウは特異な弱いにおいがあり、甘い味がします。
 第17改正日本薬局方では、グリチルリチン酸を2.0%以上含むことが規定されています。

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 消炎、緩和などの作用があり、小柴胡湯(しょうさいことう)、甘草湯(かんぞうとう)、葛根湯(かっこんとう)等、現在日本で使用される漢方処方の70%に配合されるほか、医薬品、グリチルリチン酸原料や、漬物・菓子・タバコ等々の甘味原料として利用されています。

執筆者
医薬基盤・健康・栄養研究所薬用植物資源研究センター 客員研究員 柴田敏郎

●月刊「技術と普及」平成29年5月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載

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