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トンネル被覆が不要で良食味な冬春どり若掘りゴボウ「サラサラごんぼ」

2018年3月30日

 福岡県では、水田を利用して、長さが30~60cmと短く、青葉の一部を残した若掘りゴボウ「博多新ゴボウ」を栽培しています。
 若掘りゴボウは一般的なゴボウと比べて、根が軟らかく食味が良いとされています。ゴボウは、冬になると休眠するため葉が枯れます。「博多新ごぼう」は葉がないと商品価値がなくなるため、1~3月に出荷する場合はトンネル資材を用いた保温が必要となります。
 近年農業用資材の価格が上昇し、生産者が高齢化する中、保温の必要がない(資材の購入、設置や除去および換気作業が不要)、低コストで省力的な特性を目標に、高品質も付加した品種「サラサラごんぼ」を育成しました。


育成経過
 品質の優れる「渡辺早生」と低温期でも生育の優れる「てがる」を親として、葉の生育が旺盛で根の生育や品質が良い株を選抜し、平成27年9月に品種登録しました(図1、2、3)


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図1 育成系譜図


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図2 サラサラごんぼ


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図3 冬どり作型における地上部の様子。サラサラごんぼ(左)と渡辺早生(右)


特性
1.新鮮な葉と収量性
 「サラサラごんぼ」の葉は冬どり作型、春どり作型ともに、トンネル被覆なしでも枯れないという特徴をもっています。トンネル被覆した「渡辺早生」と比較して、冬どり作型では、低温期での根の肥大が良好で、根は重く、収量も1,880kg/10aと多収です。一方、春どり作型でも抽苔率や裂根率が低く、商品割合が高いため、収量は1,700kg/10aと多収です(表1)
 また、重さ別でみても、市場性の高い根重50~75gの株割合が高く、有利販売が可能です。


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表1 サラサラごんぼの収量性(平成23年)


2.品質
 「サラサラごんぼ」は「渡辺早生」に比べて根が白く、軟らかい特徴をもちます。特に冬どり作型では、えぐみが少なく、甘味もあり良食味です(表2)


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表2 サラサラごんぼの外観および食味評価(平成23年)


3.低コストと省力化
 「サラサごんぼ」は冬どりや春どり作型において保温の必要がないので、トンネル被覆資材費が不要となり、トンネルの支柱打ち込みや被覆作業および被覆資材の開閉労力など約50時間/10a(労働時間の10%)が削減できる、低コストで省力的な品種です。


研究成果の活用
 ゴボウは作業の機械化が進んだ品目のひとつであるため、「サラサラごんぼ」の導入で、さらなる規模拡大が期待されます。なお、栽培可能地域は、福岡県内に限定されています。


執筆者
福岡県農林業総合試験場 豊前分場
野菜水田作チーム
柴戸靖志(シバトヤスシ)

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