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2017年8月 1日
育成の背景とねらい
福島県では、リンゴの主力品種である「ふじ」の生産割合が7割を越え、品種構成が大きくかたよった状況にあり、受粉樹の減少による結実不良や、作業労力の集中化が問題となっています。また、リンゴ産地としては暖かい地域に位置することから着色の向上も課題となっています。
そこで、「ふじ」と交配親和性があり、着色良好で果実品質が優れる品種の開発をめざしました。
育成の経過
「べにこはく」(図1)は、1992年に種子親を「ほおずり」、花粉親を「陽光」として交雑した実生から得られた系統で、収穫期は11月中旬~12月上旬で「ふじ」と同時期かやや遅い極晩生の品種です。2016年4月に種苗法に基づく品種登録出願公表となりました(出願番号30767)。
品種特性
開花期は、「ふじ」とほぼ同時期(表1)。果実の着色は極めて良好で、濃い紅色を呈します。果実重は平均して320~330g。糖度は15°Brix程度、リンゴ酸は0.60~ 0.70g/100mlで、「ふじ」よりも酸味が強く、濃厚な食味です。果肉は硬く、かつ蜜入りは極めて良好です(図2)。
また、貯蔵性に優れ、1℃の冷蔵で2か月半貯蔵したところ、硬度、蜜入りの低下はみられず、とくに蜜入りは貯蔵後も指数で4以上でした(表2)。
また、他の品種と比較して肉質が緻密で加工適性が高いことから、生食用だけでなく、飲食店や菓子店等業務用の需要も見込んでいます(図3)。
図3「べにこはく」の料理
中央奥 :べにこはくパイ、ミルクアイスクリームと共に
中央手前:鴨胸肉のロースト べにこはくのソテー添え 赤ワインビネガーソース
左手前 :べにこはく入りポテトサラダ
右手前 :べにこはくのコンポート、マカロン(べにこはくジャム)、ショコラ(べにこはくソテー)
執筆者
岡田初彦
福島県農業総合センター果樹研究所 主任研究員