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クリスマス需要期の年内に出荷量が多いイチゴ新品種「熊本VS03(ゆうべに)」

2016年11月18日

育成経過
 近年、イチゴの作付面積が減少傾向にある中で、早生性を有し、年内の収量が多く、総収量及び果実品質に優れる品種を目標に、平成23年度に着色が優れ、食味が良く、多収を示す系統を母親に、また、食味が良く、極早生性で多収の「かおり野」(三重県育成)を父親として交配しました。

 その中で得られた実生株から系統選抜等を重ね、地域適応性試験を実施した結果、果実が大きく良食味で、早生性と収量性に優れ、とくに年内収量が多いと実証されたため、平成26年9月に「熊本VS03」として品種登録を出願し、平成27年3月に出願受理公表されました。また、商標についても平成28年9月に「ゆうべに」の名称で登録を完了しています。
 なお、現在のところ県外へは利用の許諾を行っていません。


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「熊本VS03」の果実外観


特性の概要
●草姿は立性で草勢は強く、花房伸長に優れるため、ジベレリン処理を必要とせず、玉だし作業が容易です。
●頂花房の花芽分化は9月10日前後と早く、既存品種「さがほのか」と同程度で早生性があります。
●頂花房の花数は14花程度と多く、頂花房と第一次腋花房間の葉数が比較的少なく、連続出蕾性に優れます。


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●果皮色は、既存品種よりも濃い赤色であり、円錐形で揃いが良く、果実は大きめです。
●甘さと適度な酸味のバランスが良く、上品な食味です。甘い香りが強く、みずみずしい食感も味わえます。
●既存品種と比べると、販売単価の高い11月~12月にかけての収量がとくに多く、栽培期間を通した収量も多いことから、収益性の向上が期待できます。需要の多いクリスマス時期頃には、たくさんの「ゆうべに」が店頭で販売される予定です。


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 :「ゆうべに」の着果状況 /  :「ゆうべに」の果実断面


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栽培上の留意点等
●安定した収量を確保するためには、栽培期間を通して適正な草勢を維持することが重要であり、電照処理が基本になります。
●株の徒長や強草勢の影響で、着色不良果が発生することがあるので、過度の電照処理及び極端な高温管理を避けます。


「ゆうべに」の生産、普及に向けて
 平成27年度には、県内約2haで栽培が開始され、同28年度は約45ha、来年(同29年)度は約100haの栽培面積を目標としています。

 全国的にイチゴの作付面積が減少する中で、販売額の向上が見込める「ゆうべに」は、生産者及び面積の減少に歯止めをかける品種として期待されます。また、消費者に対しては需要の多いクリスマス時期に高品質イチゴを供給できることから、本県では、新品種「ゆうべに」を熊本県のオリジナルブランド商品として生産・販売の両面から振興していく予定です。


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執筆者
三原順一
熊本県農業研究センター 農産園芸研究所

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