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2015年11月16日
育成の背景
福岡県は「富有」を主力品種とした甘ガキ生産量全国1位の産地ですが、近年カキの価格低下が著しく、農家経営を圧迫しています。このため県では、カキ生産者の経営改善のために、大果で食味が優れる九倍体の完全甘ガキ品種「秋王」を育成しました。
育成の経過
「秋王」は福岡県農林業総合試験場が、種子親に着色が良く収量性の高い「富有」と、花粉親に大果で良食味の「太秋」を交配して得られた不完全種子を胚培養することで育成した、世界初の九倍体の完全甘ガキ品種です。平成24年4月に品種登録されました。
品種特性
「秋王」の発芽期は3月中旬、開花期は5月下旬で「富有」と同時期です。花蕾数は多く、雄花がごくわずかに着生し、早期落果は多い傾向にあります。収穫期は10月中旬~11月上旬で、「富有」より早く「太秋」とほぼ同時期です。
果重は300gを超える大玉で、果形は扁平。「太秋」より着色良好で、条紋が少なく外観が優れます。糖度は18度以上と高く、「太秋」に似たサクサクした食感で、果汁が多く、食味良好です。九倍体のため、種子はほとんど形成されません。炭そ病に対する耐病性は、「富有」や「太秋」と同程度です。
表2 「秋王」の果実品質特性(平成20~22年)
(それぞれクリックで拡大します)
研究成果の活用
本年度から果実の一般販売が開始されます。本品種は良食味であり、種子がほとんどなく食べやすいことから、カキの消費拡大や産地活性化が期待されます。
なお、苗木の供給は、県が栽培を許諾した県内生産農家に限られます。
執筆者
福岡県農林業総合試験場 果樹部長
千々和浩幸(ちぢわ ひろゆき)