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2015年11月 9日
育成の背景
ブドウの需要期である8月上中旬における品種は、「キャンベルアーリー」や「巨峰」等のフォクシー香を有するものが大部分です。一方、近年「シャインマスカット」をはじめとするマスカット香を有する品種も人気が高まっていますが、この時期にマスカット香を有する品種はなく、多様化する消費者ニーズへの対応は十分ではありません。
さらに、黒色系ブドウの着色は夏季の高温で阻害されるため、近年の地球温暖化の影響により、着色不良が大きな問題となっています。
そこで、これらの問題に対応するため、福岡県農林業総合試験場は、盆の需要期に収穫でき、着色良好でマスカット香のある早生黒色ブドウ新品種を育成しました。
育成の経過
平成14年にマスカット香の「博多ホワイト」と早生の「96-9-28(宝満×リザマート)」をかけ合わせ、その中から高温条件下でも着色良好でマスカット香を有する有望系統を選抜し、平成26年に欧州系ブドウ「ブラックマスカット」として品種登録出願を行い、平成27年に出願公表されました。
品種特性
樹勢は中で、トンネル作型における発芽期は3月中旬、開花期は5月中旬、収穫期は「巨峰」より早い8月中旬です。花穂着生は良好で短梢1芽せん定栽培ができ、果粒形は倒卵で裂果の発生はありません。
果粒重は「巨峰」より小さく10g程度(種なし栽培が可能)です。果皮は紫黒色で着色が優れ、マスカット香があります。糖度は18度、酸含量は0.6%程度であり、「巨峰」よりも酒石酸の含有率が少ないため酸味は強くありません。
研究成果の活用
早生で着色良好なため、「巨峰」の着色が不良な園地でも盆前に出荷することができます。
黒色系でマスカット香を有するといった、これまでにはない特徴を有しており、新たな需要を喚起できることが期待できます。
執筆者
福岡県農林業総合試験場 果樹部長
千々和浩幸(ちぢわ ひろゆき)