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黒斑病・黒星病複合抵抗性のニホンナシ新品種「ほしあかり」

2015年4月30日

育成経過
 黒斑病と黒星病はニホンナシの重要病害です。主要な経済栽培品種は、「二十世紀」を除き黒斑病には抵抗性ですが、黒星病にはすべて罹病性であるため、黒星病抵抗性品種の育成が強く求められてきました。そこで、黒斑病と黒星病の双方に抵抗性を示す良食味品種を育成しました。

 1996年に農研機構果樹研究所において、ニホンナシ「巾着」由来の黒星病抵抗性を持つ育成系統である314-32(「巾着」×「豊水」)に、良食味品種である「あきあかり」を交雑して得られた実生から選抜されました。2007年からナシ第8回系統適応性検定試験に供試され、全国37場所でその特性を検討した結果、中生の黒星病抵抗性品種として有望であるとの結論が得られ、2014年12月に品種登録出願公表されました。

 品種名は黒星病抵抗性であることから『ほし』、「あきあかり」の子であることから『あかり』をそれぞれ取って「ほしあかり」と名付けられました。


品種特性
 樹勢は弱く、枝梢の発生はやや少ない品種です。短果枝、えき花芽の着生はともに多く、花芽の確保は容易です(表1)


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 収穫中央日は育成地の茨城県つくば市で8月31日と、「幸水」と「豊水」の中間に収穫される赤ナシ品種です(表2、写真1)。果実重は「幸水」程度、果肉硬度は「幸水」、「豊水」より低く、軟らかい肉質の品種です。果汁の糖度は「幸水」、「豊水」より1%程度高く、pHは5.1で酸味は感じないため、食味が優れています(表2)。みつ症の発生はみられず、心腐れがわずかに発生しますが、その程度は軽微です。
 自家不和合性遺伝子である遺伝子型はであり、主要品種とはすべて和合性を示すと考えられます。


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写真1 「ほしあかり」の結実状況


病害抵抗性
 殺菌剤無散布圃場においても、黒斑病と黒星病のいずれの被害も認められていません。また、複数年の黒星病の接種検定でも病徴が見られていません。今後、生産現場レベルでの実証が必要ですが、殺菌剤散布回数を削減した減農薬栽培が期待できます。ただし、赤星病には罹病性なので注意が必要です。


栽培適地と栽培上の留意点
 系統適応性検定試験の結果から、全国のニホンナシ栽培地帯で栽培可能であると考えられます。とくに黒星病多発地帯での普及が期待されます。
 条溝が明瞭に現れるのに加えて果実の形もばらつくため、外観は良くありません(写真2)。また、樹勢が弱く樹冠拡大が遅いため、栽培管理等により樹勢の強化に努める必要があります。


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写真2 「ほしあかり」の果実


執筆者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
果樹研究所 品種育成・病害虫研究領域
高田 教臣

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