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2015年4月13日
育成の経過
農研機構果樹研究所において、赤肉のニホンスモモ「笠原巴旦杏」とウメ「養青梅」を1993年に交雑して得られた実生から選抜され、1999年より開始されたウメ第2回系統適応性検定試験に「ウメ筑波10号」として供試されました。2006年度の検討会で新品種として有望と判断され、2009年に品種登録されました。
赤い梅飲料の原料に利用できることから「露茜」と命名されました。
品種特性
樹勢は弱く、樹姿は開張します。開花期は育成地(茨城県つくば市)で3月下旬となり、「南高」より1週間から10日遅く、ウメ品種の中でも遅い方になります。果実の収穫期は「南高」より3週間ほど遅い極晩生品種で、育成地では7月中旬に成熟期を迎えます。果実重は50~70gと大きく円形で、成熟すると果皮と果肉が赤く着色します。結実は「南高」と比較すると少ないですが、スモモとウメの自然交雑種である「李梅」より多いです。
栽培上の留意点
「露茜」は大半のウメ品種より開花期が遅いため、結実確保のためには開花期の近いウメ品種、あるいは開花期の早いアンズ品種などの受粉樹を利用することが重要です。
他のウメと比較して樹の大きさが小さく、樹高が低いため、管理作業を省力的に行うことができます。1樹当たりの収量は他のウメ品種より少ないですが、栽植密度を高くすることにより、他のウメ品種と同程度の単位面積当たりの収量を確保することが可能です。その一方で、樹勢が低下しやすく、枝の発生が少なくなりやすいため、適度な切り返し剪定を行い、結果部位の確保に努める必要があります。
果実利用上の留意点
酸味が多く、他のウメと同様に生食には適しません。また、梅干しにも適しませんが、果皮・果肉にアントシアニンを含むため、綺麗な赤色の梅酒や梅シロップができます。一般的なウメと比較すると酸度が少し低いため、梅シロップを作る場合は、消毒をしっかりと行い、酸度の高い他のウメや酢を加えるなど、発酵やカビを防ぐための工夫が必要です。
執筆者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
果樹研究所 品種育成・病害虫研究領域
末貞 佑子