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2014年12月26日
育成の背景
温暖化が進むなか、近年、初冬期の急激な温度低下から裂傷型凍害や越冬芽の凍害が頻繁に起こるようになり、早生種を中心に幼木の枯死や収量の低下が懸念されるようになりました。また、消費者の嗜好の多様化やリーフ茶離れによる緑茶の消費減退等から、荒茶価格の低迷が続き、より高品質で付加価値の高い品種の育成が強く望まれていました。
育成経過
「きらり31」は、やや早生で耐寒性が強く色沢が優れる「さきみどり」を種子親、早生で旨味が強く製茶品質に優れる「さえみどり」を花粉親として、旧指定試験事業により1994年に交配を行い(図1)、得られた実生群から生育や耐病性、耐寒性、製茶品質などの形質について選抜し育成した品種です。
1996年から3カ年間個体選抜試験、1998年から6カ年間栄養系比較試験、2004年から2010年までは「宮崎31号」として、全国の15試験地で6~7カ年間、系適試験や特性検定試験、地域適応性試験等を実施し、2011年度からは農林水産省の農食研究推進事業23014(中山間地域の茶業活性化に資する茶品種とその利用技術の開発)によって本品種の育成を進めました。2013年12月に品種登録出願を行い、2014年5月に品種登録出願公表になりました。
特性の概要
「きらり31」は中間型の樹姿で樹勢は強く、耐寒性については、成葉の赤枯れや越冬芽の凍害は「やや強」で、裂傷型凍害については「強」です。耐病虫性については、輪斑病には「やや強」ですが、炭疽病やもち病には「弱」、赤焼病には「やや弱」です。クワシロカイガラムシには「極弱」です(表1)。
一番茶の萌芽期及び摘採期は、「やぶきた」より3~4日程度早い早生種です。生葉収量は一、二番茶ともに多収で、「かなやみどり」以上です(表1)。
製茶品質は一、二番茶とも「やぶきた」や「さえみどり」よりアミノ酸の含有率が高く、煎茶として色沢が優れ、内質も温和な香味で「さえみどり」並に良質です。玉露やかぶせ茶に加工しても「さえみどり」と同等以上に優れます(表2)。
表2 「きらり31」の製茶品質及び呈味成分
(クリックで拡大します)
栽培上の留意点
「きらり31」は早生種ですが、耐寒性に優れるので、防霜施設が整っている中山間地域を含む全国の茶産地で栽培が可能です。輪斑病には強いので防除の必要はありませんが、炭疽病、もち病、赤焼病には弱いので、発生地域では防除が必要です。クワシロカイガラムシについても弱いので防除が必要です。
執筆者
宮崎県総合農業試験場茶業支場 育種科
特別研究員兼育種科長 吉留 浩