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岩津ねぎ-とろけるような甘みと口あたり、作付拡大で産地化も進む

2014年5月14日

由来と特徴

●栽培地域 :兵庫県朝来市

 岩津ねぎの歴史は古く、「朝来誌」(明治36年)によると、生野銀山が栄えた江戸時代後期の享和3年(1803年)ごろに、鉱山労働者のための冬季野菜として旧朝来町岩津地区で栽培させたのが起こりとされています。
 岩津ねぎは九条ねぎの改良種で、極めて柔らかく日持ちが悪かったことと、分げつする性質が強すぎたため、昭和2年~10年頃に、兵庫県農業試験場但馬分場で、関東の千住ねぎを交雑育種し、「改良岩津ねぎ」が育成され、この品種が現在も作り続けられています。
 岩津ねぎは葉ネギと根深ネギの兼用種です。葉色は濃緑で、寒さにあうと葉身内部に粘物質を大量に生じ、葉身及び葉鞘部(軟白部)の肉質は柔軟で香気高く、甘みが強く品質は極上です。

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出荷時の荷姿

栽培方法

 播種時期は、4月下旬~5月下旬で、茎径10mm程度の苗を作ります。
 定植時期は、7月中旬~8月上旬です。深さ20cmの植え溝を作り、株間3.5cmで、葉鞘部が曲がらないように定植します。
 土寄せは、中耕・追肥を兼ねて9月上旬、下旬、10月中旬、11月上旬に行います。
 収穫は、11月下旬~3月上旬にかけて行われます。
 岩津ねぎは、長い間の自家採種により、生産者間の形質のばらつき等、品質の低下が見られるようになりました。そこで、平成15~18年度にかけて優良系統の選抜に取り組み、平成19年度からは、朝来市岩津ねぎ生産組合が主体に採種事業に取り組み、産地の種子を供給しています。

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雪があると甘みが一層増す

食べ方

 岩津ねぎは葉ネギと根深ネギの兼用種であることから、麺類・鍋物の薬味や具として、また、吸い物・鍋物の具、焼き肉・串焼き等の焼きネギ、その他酢みそ和え、ぬた、揚げ物、さらしネギなど多くの料理法があります。
 葉身内部の粘物質と葉身および葉鞘部の柔軟な肉質から、とろけるような甘みと口あたりは、一度食べたら忘れられないと言われています。

産地の動向

 平成3年に朝来町岩津ねぎ生産組合が結成され旧朝来町内で栽培が可能となり、平成10年に旧朝来郡内(現朝来市内)に作付けが拡大しました。平成13年には朝来郡岩津ねぎ部会(現JA部会)が設立され、出荷・生産の省力化が進みました。
 平成16~17年にかけて全国農業システム化研究会の事業を活用し、大型の機械化栽培一貫体系を確立しました。
 平成23年度には栽培面積を27.3haまで拡大し、国野菜指定産地の認定を受けました。
 今後は、産地の規模拡大を図るとともに、品質管理の強化、岩津ねぎ農家の所得向上に関する仕組みを構築する必要があります。

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岩津ねぎ生産出荷状況の推移 (JA部会)

執筆者
田中得久
兵庫県朝来農業改良普及センター 普及主査 

●月刊「技術と普及」平成24年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載

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