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三豊ナスー生は塩もみ、焼いたら酢味噌、豚肉と炒めてトロトロ食感

2014年5月13日

由来と特徴

●栽培地域 :香川県三豊市、観音寺市

 三豊(みとよ)ナスが香川の地に土着した歴史は、昭和初期に朝鮮半島へ出向いていた旧三豊郡の農家が、おいしいナスを見つけ、この種子を持ち帰ったのが始まりです。三豊市、観音寺市(ほとんどが旧三豊郡)ではナスと言えば三豊ナスが定番です。
 三豊ナスは、晩生の大果(千両ナスの3倍)品種です。特徴は、花が咲いてから収穫まで25日程かかるため、収量が少なく経済栽培に向かないこと。また、表皮が薄く柔らかいため、輸送中に傷がつきやすく、店持ちが悪いことです。
 香川県出身の大平総理大臣が誕生した頃、コロコロとした体型にあやかって「大平ナス」の名前で京阪神市場に出荷を試みた経緯もあります。

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香川の地産地消の王様「三豊ナス」

栽培方法

dento_nasu_kagawa2.jpg 2月中旬に播種する温床育苗で、5月上旬の露地定植が基本作型です。施肥は基肥の窒素成分量で10a当たり10㎏程度が目安です。
 草姿が大きく、葉も大型で樹勢が旺盛なため、施肥量が多すぎると不受精果や奇形果が多くなりやすい。
 一方で、着果最盛期になると生長点が細くなり、樹勢低下による果実の肥大不足や食感不良等(果肉内の種の硬化)が起こる、農家泣かせの作りづらい品種です。
右 :農家泣かせの作りづらい品種で、栽培講習会が重要

食べ方

 新鮮な生果は皮付きで塩もみ、漬物は辛子漬け、焼きナスは七輪やガスコンロの直火で丸焼きにして酢味噌をつけて食べます。また、豚肉と炒めると細かなナスの肉質に油が染み込みトロトロの食感になり、煮びたしにすればどんな味付けにもなじむなど、地元では経済栽培としての域内流通に加えて、家庭菜園の定番になっている。
 根強い地元の人気に支えられ、香川の地産地消の王様になっている(三豊ナスで検索すればレシピ多数有り)。

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左 :三豊市ナス料理コンテストの優勝作品「三豊ナス手巻き寿司」 / 右 :からし漬け

産地の動向

 三豊ナスの栽培は、香川県でも観音寺市と三豊市に限られています。中でも三豊市では、平成18年に旧三豊郡内の7町が合併した直後の平成19年、農業の街、新市の特産品として街興しに活用しようと市が提起しました。
 平成22年に三豊ナス研究会を立ち上げ、中四国クルージングサミットのおみやげ品として配ったり、アグリフードEXPO東京2010にも出店しました。
 平成23年には、同研究会が三豊ナス料理コンテストの開催や県内スーパーへのPR等に積極的に取り組みました。
 平成24年には、満天青空レストラン等の全国放送に取り上げられ、市の知名度向上とともに三豊ナスも有名になりました。  

執筆者
糸川桂市
香川県西讃農業改良普及センター 次長

●月刊「技術と普及」平成25年6月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載

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