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安家地大根-貯蔵性に優れ、厳寒期の保存食として活躍

2014年4月17日

岩泉町安家地域の概要

●栽培地域 :岩手県岩泉町安家地域

 岩手県岩泉町は、総面積約1000k㎡と本州一広大な面積の町で、その大部分を森林が占めています。
 「森と水のシンフォニー岩泉」というキャッチフレーズのとおり湧き水が多く、日本3大鍾乳洞の一つである龍泉洞から湧き出る水はミネラルウォーターとして販売され高い評価を得ています。
 安家地区は岩泉町の北部に位置する。安家(アッカ)という地名はアイヌ語で「清らかな水の流れるところ」に由来し、短角牛をはじめとする畜産と林業が主な産業です。冬の寒さは厳しく、氷点下10℃以下の日も珍しくありません。

特徴と由来

 安家地(あっかじ)大根の表面は鮮やかな赤ですが、紅白やピンク、白などもあります。赤色は表面の3mmくらいで、内部は白色。肉質が硬く繊維質に富み、貯蔵性に優れています。
 冬の厳しい安家地区では、この貯蔵性の良さが最も大事な特徴でした。味については、普通のダイコンと比べ辛味が非常に強く、ビタミンC含量が高いです。
 ルーツは中国華北地方といわれ、いつ頃から栽培されてきたかは不明です。先祖代々種が引き継がれて、60年前くらいまではどの家でも安家地大根を生産していましたが、戦後は品種改良された青首ダイコンに切り替えられました。
 また、冷蔵庫の普及により保存食としての価値が低下したことから生産は激減しました。

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安家地大根

栽培方法

 栽培方法は通常のダイコンとほぼ同様ですが、抽苔しやすいことから秋収穫の作型のみとなります。
 普通のダイコンより小さめで根重600g、根長20~25cm程度。生育には時間がかかり、播種から収穫まで3カ月程度を要します。
 山間地、傾斜畑での栽培が多く、ほとんどの作業が手作業で行われています。
 また、それぞれの農家が自分の家に伝わる種を代々受け継いで採種するため、農家ごとに色や形状などに違いがあります。

食べ方

 凍(し)み大根(※)として一度加工し、煮物や汁物などにして食することが多いです。
また、大根おろしは、豆腐田楽(固めの豆腐をにんにく味噌につけて焼いた物)やソバの薬味として利用します。

凍み大根とは、真冬に、一度茹で上げた地ダイコンを流水につけてアクを抜き、極寒を利用した凍結乾燥によって干し上げられたもの。

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凍結乾燥によって干し上げられた凍み大根

産地の動向

 それまで自家消費用として栽培されていたものを、昭和60年頃から系統選抜や加工研究に取り組み、販売に向けた検討が開始されました。しかし、品質が不揃いであり、生産量がわずかなことから市場出荷には向かず、販売に結びつけるのは困難でした。
 平成12年から現在の㈱岩泉産業開発が販売を開始し、飲食店への直接販売のほか、通信販売や直売所で販売されています。平成17年にはスローフード協会による「味の箱舟」の認定を受け、知名度が上昇し引き合いも多くあります。
 しかし、安家地大根を生産しているのはほとんどが高齢者であり、栽培を絶やさないための新たな取り組みを模索中です。

執筆者
小原 善一
岩手県宮古農業改良普及センター岩泉普及サブセンター 主査 農業普及員

●月刊「技術と普及」平成24年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載

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