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2014年1月10日
近年、ガソリンや灯油など、燃料価格の高値が続いています。
ハウスミカン栽培では、冬場に燃料を多く必要とするため、暖房方法や保温性の向上だけでなく、品質を下げずに果実の収穫量を多くすることが栽培の基本になります。しかし、収穫量を増やすことは、なかなか大変な課題です。
また、生産者の高齢化や担い手の問題もあり、特別な技術を習得していなくても栽培可能な、単純で省力的な栽培技術が常々求められていました。
新しい垣根仕立て栽培
そこで大分県では、新しい垣根仕立て法である「ナチュラルスレンダー仕立て」に取り組みました。
ナチュラルスレンダー仕立ての特徴は、10aあたり500本の苗木を通路2m、株間1mに植栽し、自然形(ナチュラル)を基本に、個々の樹形が細長い三角形(スレンダー)になるよう整枝したものです。
図1と図2は2012年7月に撮影した画像です。
図1は通路方向、南から北を向いたようすです。この着果状況で、糖度12度以上、10aあたり10tの果実収穫量が試算されています。
図2は通路から横方向、西から東を向いたようすです。
植栽直後の管理
2005年から栽培を行っています。
図3は2006年2月の植栽から約1年経過したようすです。支柱とロープで簡単なフェンスを作成し、植え付け直後は新梢を5~6本に整理して、強い枝を2~3本上向きに誘引します。その後は、枝の先端から発生する新梢が3本以内になるよう整理します。
枝つり作業の合理化
慣行のハウスミカン栽培では、果実の重みによる枝折れの防止や、個々の果実に光をあて、着色や糖度を向上させる目的で、枝をヒモなどでつり下げる「枝つり作業」を行います。当初はこの慣行に従い、ヒモで枝つりを行っていましたが、とても大変な作業でした(図4)。
そこで、この作業の省力化のため、鳥獣害対策用のネット(10cm×10cm)の利用を検討しました。
収穫の際、多少ネットが邪魔になりますが、ヒモと違い、ネットは数年使用できるメリットがあります。収穫後は剪定のため巻き上げ、摘果後に再び下ろし、果実をネットに引っかけます(図5)。このネット枝つりで、大幅に作業労力を軽減できます。
今後の課題
いかに早く垣根仕立ての完成状態に移行するかが課題です。
従来の樹を伐採して苗を移植する必要があるので、現在は大苗育苗と植栽方法に関する栽培試験に取り組んでいます(図6)。
執筆者
大分県農林水産研究指導センター 農業研究部 果樹グループ 温州ミカンチーム
矢野 拓(やの たく)
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