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2013年7月 8日
●育成の目的
トマト黄化葉巻病は、タバココナジラミが媒介するウイルス病で、発病すると収量が激減するトマトの重要病害です。生産現場からは、トマト黄化葉巻病に耐病性を持ち、かつ、生食用として利用できる、良食味なトマト品種の開発が望まれていました。
そこで、愛知県農業総合試験場は、タキイ種苗株式会社と共同で、トマト黄化葉巻病耐病性品種の開発を目指しました。
トマト黄化葉巻病の発病状況(左上)とTYLCV(トマト黄化葉巻ウイルス)を媒介するタバココナジラミ(右下)
●育成の経過
平成20年に共同研究を開始しました。まず、愛知県農業総合試験場で育成した、食味の良い「桃太郎ファイト」とトマト黄化葉巻病耐病性「Athyla」を交雑して選抜・固定を行った系統と、タキイ種苗(株)で育成した葉かび病抵抗性系統を組み合わせてF1植物を作出しました。その中から、トマト黄化葉巻病の耐病性、食味、主要病害の抵抗性で優れる1組み合わせを有望と判断しました。この組み合わせを「アイタキ1号」と名付け、平成24年12月に種苗法に基づく品種登録出願を行いました。
●品種特性
「アイタキ1号」の特徴は、(1)果実は、食味や揃いが良く、果実の重さは180~200g程度、(2)愛知県で広がっているイスラエルマイルド系統のトマト黄化葉巻病に耐病性を示す、(3)トマト黄化葉巻病以外に、トマト葉かび病(cf9)、萎凋病(レース1、レース2)、根腐萎凋病、タバコモザイクウイルス等、トマトの主要病害に抵抗性を示す、(4)「ハウス桃太郎」より3~5日程度早く収穫でき、同等の収量が得られることが挙げられます。
●栽培上の留意点
適用作型は、トマト黄化葉巻病被害が大きい抑制及び促成作型が中心となります。
「アイタキ1号」は、国内で蔓延しているトマト黄化葉巻ウイルス系統であるイスラエル系統とイスラエルマイルド系統のうち、特にイスラエルマイルド系統に高い耐病性を示します。いずれのウイルス系統の場合も、耐病性品種でも無病徴感染するため、従来どおり媒介虫であるタバココナジラミの防除を徹底する必要があります。
また、多肥等により草勢が強くなりすぎると花痕が大きくなりやすいので、適正な草勢管理を行うことが必要です。
執筆者
愛知県農業総合試験場園芸研究部野菜研究室
加藤政司