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根こぶ病と黄化病に抵抗性のハクサイ新品種「あきめき」

2012年11月14日

 ハクサイ産地では、土壌伝染性の微生物による根こぶ病(図1)と黄化病(図2)の発生が大きな問題となっています。根こぶ病では病気を引き起こす菌の病原性が分化し、これまで抵抗性とされた品種が病気にかかることが問題となっています。また、低コストで行える黄化病の防除対策は、現在のところありません。



図1 根こぶ病の病徴



図2 黄化病の病徴


 そこで、黄化病に抵抗性のある「秋理想」と根こぶ病に強い抵抗性をもつ「はくさい中間母本農9号」(PL9)を用いて、2つの難防除病害に抵抗性をもつ品種の育成に取り組みました。特にDNAマーカーを活用することにより、これまで難しかった抵抗性遺伝子の集積を効率よく行いました(※)

(参考)新しい技術「DNAマーカー選抜」から生まれた品種


「あきめき」育成の経過 
 「秋理想」の両親にPL9を交雑しFを得ました。得られたFにそれぞれの親を再び交雑します。これを4回繰り返すことにより、「秋理想」の親とPL9との中間的な草型を示したFは、次第にそれぞれの親の草型に戻っていきます。戻し交雑で得られた種子の中で、PL9に由来する2つの根こぶ病抵抗性遺伝子を受け継いでいる個体は全体の25%でしかありません。そのため幼苗のDNAを調べ、2つの根こぶ病抵抗性遺伝子を保有する25%の個体を選抜することを繰り返しました。その中から最も形質に優れるものをさらに選抜しました。その結果、得られた個体の草型は「秋理想」の両親に極めて似ていながら、PL9に由来する根こぶ病抵抗性遺伝子を持っています。


「あきめき」の特徴 
 根こぶ病菌には、加害する品種の違いを指標にする判別方法でグループ分けされる様々な種類が存在します。野菜茶業研究所では、ハクサイF品種「CR隆徳(りゅうとく)」と「SCRひろ黄(ひろき)」が示す抵抗性の違いにより、4つのグループに根こぶ病菌を分類しています。「あきめき」は「秋理想」が持っていた1つとPL9に由来する2つを合わせ、合計3個の根こぶ病抵抗性遺伝子を有しており、グループ化された4種類の根こぶ病菌系の全てに抵抗性を示す初めてのハクサイ品種です(表1)


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表1 4グループの根こぶ病菌に対する「あきめき」の抵抗性


 「あきめき」は、「秋理想」と同様に、黄化病汚染圃場で栽培した場合にも発病しにくい品種です。「あきめき」は、ハクサイ栽培にとって、最も防除困難な根こぶ病と黄化病の2つの土壌病害に対して抵抗性を発揮します(表2)


2012akimeki_hyo2.jpg
表2 「あきめき」の黄化病抵抗性


 「あきめき」は、は種後約75日で収穫が可能で、出荷時の球長は約30cm、重さは2.5~3kg程度であり、根こぶ病抵抗性以外の特性は「秋理想」に類似します。球内の色は鮮やかな黄色で、外葉の緑とのコントラストも抜群です(図3)



図3 「あきめき」の収穫物外観および内部


「あきめき」栽培のポイントと入手方法 
 栽培方法は「秋理想」や75日タイプのハクサイと同様ですが、根こぶ病菌は極めて多様で、4グループ以外の菌の存在も認められています。根こぶ病が多発している圃場等で栽培される際には、他の防除手段を併用されることをお勧めします。
 平成24年度より一般生産者向けに種子の販売が開始されました。入手先は共同育成相手先の株式会社日本農林社(TEL 03-3916-3341)です。


執筆者
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
野菜茶業研究所 野菜育種・ゲノム研究領域
葉根菜育種研究グループ
松元 哲

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