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リンゴオリジナル新品種「サワールージュ」

2010年12月14日

●育成の目的
 近年、地産地消の意識の高い実需者を中心に、酸味の強いリンゴを求める声が多く、消費者の中にも家庭での加工を念頭に、酸味系リンゴを求める人が増えてきています。

 これらのことから、酸味系リンゴ「紅玉」を補完し、さらに「紅玉」の栽培上の欠点を克服した品種の開発を目指しました。



「サワールージュ」(S)と「紅玉」(J)


●育成の経過
 1984年に「ふじ」の自然交雑実生から得られた系統で、9月下旬が成熟期で、着色が良く、酸味の強いリンゴを選抜し、MA-8と命名、2代目の穂木を千秋中間台木のM.26/マルバカイドウに高接ぎして、遺伝形質が固定化しているかどうかを確認しました。

 2010年3月に「サワールージュ」として種苗法に基づく品種登録を出願し、2010年6月に出願公表されました(品種登録出願番号24669号)。


 
樹上の「サワールージュ」 


●品種特性
 「サワールージュ」の発芽期は「ふじ」と同程度であり、展葉期はやや遅れます。開花期は、「ふじ」よりも開花始め、盛期とも1日早くなります(表1)
 成熟期は9月下旬から10月上旬で、果形は円~円錐形、果実全面に濃厚に着色し、縞の発生はありません。サビの発生が少なく、果点は目立たないのが特徴です。


表1 「サワールージュ」の生態(2009年)
表1 「サワールージュ」の生態(2009年)


 果実の大きさは200~280gの中玉のリンゴで、肉質はやや粗く、糖度は12~14度、酸度が0.7%前後の「紅玉」並に酸味の強い品種で、「紅玉」の欠点である生理落果、果面障害がなく、豊産性であり、栽培しやすい品種です(表2)
 収穫時期別の果実品質を見ると、9月上旬では未熟であり、10月上中旬になると軽い香気が発生し、完熟となります。


表2 年次別果実品質
表2 年次別果実品質


 常温での日持ちはおおむね8日から10日で、摂氏3度の冷蔵条件では、日持ちは1カ月から1カ月半になります。S遺伝子型はS1S7で、「シナノスイート」、「きおう」、「千秋」と同じ遺伝子型なので、これらの品種の受粉樹としては使用できません。現在のところ、斑点落葉病など、主要な病害に特に弱い傾向は見られません。

 料理、菓子材料等のクッキングアップルとして、あるいは酸味を好む人向けのリンゴとして、今後の普及が期待されます。


  
 :「サワールージュ」のタルト
 :「サワールージュ」を添えたポークソテーノルマンディー風


執筆者
宮城県農業・園芸総合研究所
菊地秀喜

(画像をクリックすると大きく表示されます)

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