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イチゴを使った新たな需要を開拓するいちご園

2018年7月 6日

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近藤正博さん (千葉県長生郡一宮町 近藤いちご園)


 千葉県九十九里浜の南端に位置する、温暖な気候の一宮町は、農業のさかんな地域である。
 「近藤いちご園」の近藤正博さんは、26品種ものイチゴを栽培し、イチゴ狩り園も運営する。シーズンになると、「イチゴの食べ比べが楽しい!」と多くの観光客が訪れる。また、加工品の開発も手がけ、なかでも大粒のイチゴが入った大福は、土産品として人気だ。「生鮮、加工、サービス業...、イチゴはさまざまな展開ができるのが魅力です」と近藤さんは話す。


主体の米と並行してイチゴの栽培を開始
 米の生産者だった近藤さんが、イチゴの栽培を始めたのは1998年。「一時は、最大40haで米を作っていました。売り上げは悪くなかったものの、機械などへの投資や米の相場を考えると、この先、米だけでよいのだろうかと考えることもありました。そんな時、近くのイチゴ園に行く機会があり、そこで試食したイチゴがおいしく、自分も作ってみたいと思ったのがきっかけです」。
 イチゴ園から苗を分けてもらうと、まずは30坪で栽培。想定していた以上においしいイチゴを作ることができ、翌年は栽培面積を200坪に拡大。ビニールハウスを建て良質の腐葉土でできた黒土を入れて、本格的にイチゴ作りを開始した。直売所での販売は好調で、毎年、生産量を増やしていった。現在は、3000坪(100a)の敷地に32棟のハウスを建設し、6万株のイチゴを栽培している。


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左 :直売所前には千葉県生まれの品種「チーバベリー」ののぼり旗も
右 :白いちご大福は「雪の女王」という名称で商標登録


新品種をいち早く取り入れ26種類のイチゴを栽培
 2007年からは、観光摘み取りも始めた。「近藤いちご園」の最大の特徴は、26もの多品種のイチゴを栽培していること。近年はイチゴの品種開発が活発に進んでいるが、そうしたなか、近藤さんは新品種をいち早く栽培している。「お客さんもいろいろな種類のイチゴが食べられたらうれしいでしょうし、私自身、新しいものにチャレンジしたい気持ちが強かったですね。白イチゴもすぐに作ったし、『かおり野』を栽培したのは、千葉県で最初でした」。積極的に新品種を取り入れ、また、同業者のネットワークを大事にしている近藤さんのところには、「新しいイチゴを作ってみないか」という声がよくかかるそうだ。
 季節ごとに9種類以上のイチゴを食べ比べできること、また、何よりもイチゴそのものの味がおいしいことが評判となり、「近藤いちご園」は、休日には車の長い列ができるほどの盛況ぶりをみせる。メディアにも多く取り上げられ、はとバスが立ち寄る人気のスポットにもなっている。


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列ごとに違う品種が栽培され、食べ比べが楽しめる


生産者の強みを活かした加工品作りに取り組む
 近藤さんは、加工品の製造にも取り組んできた。最初に手がけたのは、「いちごジャム」だった。「今は撹拌機を入れていますが、当初は手作業だったので、たくさんの量を作ることができませんでした。加工が追い付かず、イチゴを廃棄することもありました」と振り返る。
 次に目を付けたのが、「いちご大福」だ。2013年に県の「ちばの6次産業化チャレンジ支援事業」を活用し、加工機材を購入した。「大福の作り方は、機材販売のメーカーから技術指導をしてもらいました。しかし、始めに作った餅の生地は思っていたよりも硬い仕上がりで、納得がいきませんでした。そこで、コーディネーターを紹介してもらい、何度も試作を重ね、従業員やその家族にも意見を聞きながら今の生地にたどり着きました」。


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左 :イチゴの詰め合わせパック。お土産にも最適
右 :イチゴの甘さがギュッと凝縮されたいちごジャム。リピーターも多い


 さらに近藤さんは、いちご大福の形状にもこだわった。「生地に切り込みを入れて、真ん中にイチゴを入れるのがベーシックな形。でも、私はイチゴ本来の味を味わってほしかったので、イチゴをメインに餅やあんをその周りに添えるようにしました。また、直売所がビニールハウスのため、衛生面を考えると個包装にしなくてはなりません。カプセルタイプのケースに大福を一つひとつていねいに入れ、持ち運びで多少揺れてもイチゴがケースにぶつからないように工夫しました」。こうして編み出されたいちご大福は、新鮮な大粒のイチゴがやわらかな餅に鎮座し、見た目にもかわいらしく、実においしそうだ。ちなみに、もち米も自家製であり、生産者ならではの強みを活かした一品となった。

 現在いちご大福は、通常の赤イチゴのほか、白イチゴ、黒イチゴの3種類を製造している。特に土産の一番人気は、白イチゴの大福。「雪の女王」というネーミングで商標登録も行い、PRを展開している。


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左 :今年から白、赤、黒イチゴ、3種類のいちご大福がそろった
右 :「ここのイチゴはおいしい! というお客さんの声が励みになる」と言う近藤さんと普及指導員


新たな加工品開発を試案。観光への特化や販路の拡大も
 近藤さんは実兄とともに経営を行い、今もイチゴと並行して21haの規模で米を生産している。従業員は通常6人で、ピーク時は12人がフルで稼働。また、ここ数年、力を入れているイチゴの売り上げは右肩上がりである。
 「この先、さらに売り上げアップをめざすには、生鮮を減らして観光摘み取りに特化するのも、1つの方法です。というのは、イチゴ詰めの作業はある程度の熟練が必要で、労力がいるからです。最近は、土産用のイチゴパックが売り切れた時に、いちご大福が代わりになるので助かっています」「そのいちご大福ですが、今後は百貨店などに販路を広げられないか。また、大福以外にも高級路線の加工品が作れないか、思案しているところです」と、近藤さんは、将来のビジョンを語る。
 「イチゴは価格が安定していることに加え、イチゴ狩りのようなサービス業や加工品の開発など、さまざまな展開ができるのが魅力です。常にアンテナを張りながら、商売のチャンスにつながるアイデアを練っています」。(ライター 北野知美 29年3月9日取材 取材協力:千葉県長生農業事務所改良普及課)
●月刊「技術と普及」平成29年6月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載


近藤いちご園 ホームページ
千葉県長生郡一宮町一宮9177-7
TEL:0475-40-6115