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2015年8月17日
歴史ある江戸近郊の農業地帯だった
東京23区に残る農地の中で江東地域(江戸川区、葛飾区、足立区)は東京都の東端に位置し、埼玉県・千葉県との境を流れる江戸川、荒川、中川に接する地帯である。かつては江戸近郊の農村地帯として、野菜や花を「江戸・東京」に供給する農業の盛んな地域だった。以前に比べて農地は減ったが、代々農業が営まれている歴史ある産地である。
住宅街を進んでいくと突然、畑とハウス、母屋と作業小屋という農村では当たり前の風景が現れる。清水芳治さんの農地は、四方を隙間なく住宅や建物等に囲まれている。
葛飾区にはかつては水田が広がっていたそうだ。現在、葛飾区では、特産のコマツナ、エダマメ、ネギの他、直売向けの果菜類も作られている。区が実施している収穫体験イベントも好評を博している。
エダマメを市場出荷
清水さんは22歳で一度就職したが、30歳のとき実家に戻った。それ以来、父と一緒に農業に従事し、現在は、20aの露地を中心にエダマメやコマツナ等を栽培している。以前はエダマメの早出しが盛んだったという。
清水さんのハウス栽培のコマツナは収穫を終えていたが、露地では、収穫間近のエダマメが実りの時期を迎えようとしていた。栽培品種は「あづま錦」が中心で、一部で「サヤムスメ」も栽培する。清水さんが言うには「「あづま錦」は味がよく、何よりずっと作っているので、作り慣れている」とのことであった。
普及センター担当者は、「今から15年ほど前、エダマメの収穫期直前に茎葉が黄化・落葉し、激しい症状では枯死に至る障害が地域で目立つようになった。原因を究明した結果、ダイズシストセンチュウが原因とわかったのが10年ほど前になる。清水さんの圃場でも被害がひどく、展示圃を設置し、さまざまなセンチュウ対策について検討を重ねてきた。現在は、防除効果の高い薬剤の利用などにより、清水さんのエダマメ被害は軽減されている」と説明する。
左上 :エダマメ / 右下 :普及センターによるダイズシストセンチュウ防除指導
清水さんにエダマメ栽培の工夫を尋ねると、「マルチ栽培とし、タネは直播きで、1穴に2粒、1粒、2粒、1粒と交互に播く。1畦に4条で15cm間隔(がベスト)」。畑の状態は、もともとの土質がよく、客土はしていない。「ここのところ、5月の高温で糖度があがらない。以前に比べて味がぼけて、出来が今ひとつと感じている。栽培品種や時期についても検討したい」とのこと。出荷先は市場のみで大田市場が中心。以前は枝を結束して出荷していたが、現在は袋詰めでの出荷である。
都市農業の光と影と
この地域の農業には、大都市ならではの有利さと不利がある。すぐ近くに消費者がいて市場や量販店が複数あり、売り先には困らない。反面、民家が農地に迫っているため、日陰をつくり、日照不足や風抜けの悪さ、堆肥置き場の確保等の悩みがある。
左 :エダマメ畑
近所の生産農家はもう2、3軒しかいないというが、「できる限りつくっていきたい」と清水さんは笑顔で話してくれた。(水越園子 平成27年6月23日取材 協力:東京都中央農業改良普及センター)