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ミカン農家のお母さんたちが、日本一のブランドみかんを使った自慢の品を加工販売

2015年6月 1日

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矢野洋子さん(右)(愛媛県八幡浜市 3・Sunカンパニー株式会社 代表取締役)
(左は南予地方局八幡浜支局地域農業室(取材当時)の紺田専門員)


 愛媛県八幡浜市真穴地区は、品質日本一と言われる温州ミカンで名高い、歴史ある産地だ。宇和海に面した地区は、見渡す限り海沿いから山全体にミカンの木が植えられ、見る者を圧倒する。

 加工場に矢野さんを訪ねた日は、ミカンゼリーの新しいデザインと容器が決まり、翌月からの売り出しを控えた時期だった。加工作業や新しいパッケージを見せてもらいながら、話をうかがった。


始まりは加工グループのジュースづくりから
 矢野洋子さんは、真穴地区のミカン専業農家である。加工に取り組んだきっかけは、オレンジ果汁の自由化による加工用ミカンの価格が暴落したことだった。「付加価値をつけて収入を」とJA女性部の仲間8名で加工グループを作り、ミカンを手しぼりしてジュース作りから始めたのが、約20年前。ジュース以外にはシロップ漬け(ミカンの缶詰)やマーマレード等、自分たちでできる加工品を作り、近所の小売店や産直市、イベント等で販売した。


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 :真穴地区風景
 :加工場にて矢野さん


 平成12年に20万円ずつ出資して加工場を建て、本格的な活動を始めた。生活改善グループ(現生活研究グループ)にも加入した。品質に自信はあったものの競争相手が多く、収支はなかなかきびしかった。


法人化と高級路線をすすむ
201505_yokogao_3sun_0013.jpg 平成20年に法人化した。会社名を3・Sunカンパニー株式会社とし、矢野さんは代表取締役を引き受けた。決めたのは、自分たちの加工品を「安く売らない」こと。「ターゲットを首都圏のデパートに絞り、あえて地元では売らないことにした。販売に打って出ようと思っても、グループ活動では限界がある。このときは会社組織にしておいてよかった、と思いました」と矢野さんは話す。
右 :しゃれたデザインの3・Sunカンパニーの加工品。左から、シロップ漬け、ゼリー、シロップ漬け(ホール)。ホールのシロップ漬けは珍しい


 愛媛県が主催する「あぐりすとクラブ」(現ろくじすとクラブ)にも加入し、八幡浜支局地域農業室の助言を受けながら、商品開発や販路の開拓に取り組んだ。平成23年には、他業者とのコラボ商品が県内大手デパートの中元と歳暮商品に採用された。また、平成24年からはアグリフード東京や大阪に出店するなどして、手応えをつかんだ。その後も積極的に外に売りに出ている。


3・Sunカンパニー現在の活動と今後
 3・Sunカンパニーの従業員はパート雇用で、全員ミカン農家の出身だ。作業日が不定期なのは、加工品の賞味期限が短いためで、在庫がなくなったら作る、注文が入ったら作るという。
 おもな加工品はジュース(現在は外部委託)、マーマレード、シロップ漬け、ひなあられなど。また、主力商品の加工の合間に、まんじゅう、団子、もち、赤飯、すし、たれやつゆなども作り、近くのスーパーマーケットや産直市に出している。
 こうして6次産業化を進める矢野さんだが、立ち位置は、「農業者であること」で揺るぎない。ミカンの生産から加工、販売まで、自社ですることにこだわりたい、と言う。「おいしい素材からしか、おいしいものは作れません」と自信をのぞかせる。


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 :贈答用の詰め合わせ
 :矢野さんは農家民宿も経営し、ミカンを使った加工品づくりなどの体験プログラムも実施している


 今後は、4月から新パッケージでゼリーを売りだしたこともあり、売り上げを増やしていきたい。地元に雇用を生み出したい、高齢のため農作業はむずかしくても加工場でならば働ける人もいるからとのこと。また、農家民宿も経営している矢野さんだが、いずれは地域の人が集うサロンも開いてみたい、と話してくれた。(水越園子 平成27年3月4日取材 協力:愛媛県南予地方局産業経済部八幡浜支局地域農業室・産地育成室)


▼3・Sunカンパニー株式会社 ホームページ
▼農家民宿「みかん亭」 ホームページ

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