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2015年4月 1日
兵庫県篠山市は県の中東部、京都府の丹波地域に隣接する。標高が200~250mの篠山盆地は昔から、「丹波の」が頭に付く、黒大豆や栗といった特産品丹波ブランドの産地として有名だ。
平野正憲さん(67)は兵庫県の普及指導員として、長年、農業の指導をする立場で働いてきたが、定年後の今は、山の芋35a、種子用黒大豆16aと米1.5haを作る農家である。
圃場に入らせてもらう。畦の高さは20~30cmくらいか。雑草除けのシートが畝間に張られ、前夜の降雨の水が溜まっていた。圃場を訪れたのは10月下旬。朝晩の冷え込みにより、芋の葉が黄色く色づきはじめている。
山の芋は連作できない。中2年空けて作る。「水稲の転作で圃場3枚を、回しながら作っている」と平野さん。「葉が青い(緑の)うちは、芋のアクが強いんだ。黄色くなって枯れるまで(土中に)置いておくと、アクが抜ける」と教えてくれた。
右 :平野さんの山の芋畑
今年の山の芋の出来を尋ねると、「(今年は)8月6日から雨が続いて、日照不足だったからね。8月半ばから芋が太る時期なのに」と残念そう。土の中から、試しに山の芋を掘り出すと、まだ小振りの芋が顔を出した。「今からしばらくは(置いていても)大丈夫。まだ大きくなるよ」と教えてくれた。
左 :平野さん(右)と丹波農業改良普及センターの武田普及主査(左)
右 :隣の畑には平野さんの黒大豆(種子用)がまだ青く育っていた
両親が作っていた田畑を引き継いで、今では農作業に勤しむ毎日だ。「米はグループを組んでいる5人で、尼崎のスーパーマーケットへ売っている。黒大豆は種子用に出荷し、栗も20本ほど作っている」と楽しそうに畑をながめる。
平野さんから、「百姓はおもしろい」という言葉を聞いた。「いいものを作って、収入を上げる。農業はやりがいがあるよ。若い人には言うんだ。どんぶり勘定ではいけない、複数の作物を組み立てて『経営』をしなさいよと」
談笑する平野さん(左)、丹波農業改良普及センター秋山所長(中)と武田普及主査(右)
平野さんの圃場では、篠山市内の東雲(しののめ)高校に通う男子生徒が、ひとりバケツを片手に黙々と作業していた。週1回の農業実習を受け入れて、もう1年以上になるという。経験豊富な平野さんの下で多くを学んでほしい。(水越園子 平成26年10月23日取材 協力:兵庫県丹波県民局丹波農業改良普及センター)