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東日本大震災を乗り越えて(1) 被災した田んぼが復活、3年ぶりの収穫に喜び

2013年12月12日

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菅原壮一さん(岩手県陸前高田市) (写真右。左は大船渡農業改良普及センター職員)


 数百m先は「陸前高田の一本松」で知られる海岸である。訪れた10月初旬、津波に襲われ、耕作不可能となっていた陸前高田市米崎町浜田川にある菅原壮一さん(58)の田んぼいっぱいに、頭を垂れ黄金色に輝く稲が豊かに実っていた。

201311yokogao_iwate2_1570.jpg 朝方に雨が上がり、日が差してきた田んぼの横でコンバインの調整をする菅原さんは、陸前高田市内に水田5.5haを所有するほか、今年(25年度)は田植え4ha、刈り取り6haの作業を受託した。陸前高田の農業を支える担い手のひとりである。

 海岸に近いこの一帯は、平成23年3月11日、東日本大震災による津波に襲われ、耕作不可能となっていた地区である。すぐ近くを通る国道45号線沿いの水田だったところには、誘致した植物工場が8月から稼働し、また、大型商業施設の建設予定地となったところもある。復旧工事が終わっても、必ずしも全部で作付けが復活するわけではないという厳しい状況である。


震災から3年目に海岸近い圃場で作付けを再開
 菅原さんの田んぼはほとんどが津波に洗われ、耕作したくてもできない状態が続いた。23年に作付けできたのは50aのみで、昨年(24年)は3haだった。石や流木が流れ込み、長年かけて土づくりしてきた田んぼの地力は失われた。また、畦畔が崩れやすくなり、機械が落ちる心配も大きかった。その上、菅原さんの田植機(6条)1台と乾燥機(25石)1基が津波により使えなくなった。

201311yokogao_iwate2_0099.jpg 刈り取りが行われたのは、震災3年目の今年から、ようやく作付けを再開することができた田んぼだ。
 「この田んぼは復旧工事の遅れから引き渡しが遅くなり、田植えが6月にずれ込んでしまった。刈り取り時期も、本来ならもっと早いのだけれど、今年は9月下旬から10月上旬頃に遅れています」と菅原さん。3年ぶりに収穫できる喜びが伝わってくる。


 この地域は、晩生のひとめぼれ産地。登熟が早かったが収穫適期に雨が多かった昨年に比べて、今年は晴天に恵まれた。今日の水分量は19%台前半と条件がよい。


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 「田植え時にぬかるみ度合いがひどく、田植機が入らなかったところは移植を断念し、代わりに直播した。そのため生育はますます遅れ気味で、中稲か早生品種にすればよかったかもしれない」と菅原さん。直播した田んぼは、10月に入ってようやく登熟が始まったという。


「たかたのゆめ」を自ら販売
201311yokogao_iwate2_0114.jpg 今年11月2~5日に愛知県名古屋市に行き、自分が作った特別栽培米「たかたのゆめ」(※)を販売した。

 「自分が売り子になるのは初めて。得意でない仕事だったので大変でした」と菅原さん。来年以降の作付けは、自作の田んぼ5~6ha、作業受託は市内(小友地域)で10~15haになると見込んでいる。陸前高田の農業が確実に復興していくよう祈りたい。(水越園子 平成25年10月3日取材 協力:岩手県大船渡農業改良普及センター)


「たかたのゆめ」 
「あきたこまち」「ひとめぼれ」と同等の食味をもつ「いわた13号」から、耐倒伏性を強くする、穂いもち病に強くするなどの性質を導入することを目指して開発された米で、「たかたのゆめ」と名付けられた。今年度から認定農業者による栽培が始まった。

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