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野菜

水田におけるたまねぎ等の機械化一貫体系と周年生産モデルの実証(富山県 令和元年度)

背景と取組みのねらい

 富山県では、主穀作経営体の園芸品目導入による所得の向上を図るため、水田を利用したたまねぎやその後作のにんじん、キャベツの機械化一貫体系の確立と水田フル活用を目指している。
 当地域では、水田を利用した加工用キャベツやにんじんの栽培は行われているが、今年度は、新たに前作となるたまねぎ及び後作となるキャベツ、にんじんの機械化一貫体系や省力体系を実証する。
 たまねぎ栽培においては、①効果的な排水対策、②加工業務用栽培技術の確立、③直播等更なる省力化の検討、たまねぎ後作のにんじん、加工用キャベツにおいては、④排水性向上のための超高畝栽培(にんじん)、⑤ドローンを用いた生育診断と可変施肥による生育の斉一化(加工用キャベツ)が課題となっており、これらの対策が求められている。

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畝間に水がたまり(左)、地上部の生育が抑制される(右)

 そこで、効率的な排水対策技術等の検討による安定生産技術の確立、加工業務用に適した品種の選定と機械化一貫体系の確立、直播による育苗、定植作業の省力化を目指すこととした。

対象場所

●富山県高岡市
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 富山県は、7つの1級河川から形成された平野と扇状地で耕作がなされ、水田率が96%と全国一高い。
 気象条件は、日本海側気候であり、冬季は積雪に覆われ、夏はフェーン現象の影響で気温が上がり、高温多湿となる。
 交通は、首都圏、関西方面、中京方面に高速道路が整備されているため、3大都市圏のいずれにも5~6時間以内で輸送が可能である。
 このような立地条件で、本県の農業算出額の約75%が米となっており、米に特化した生産構造となっている。 こうしたなか、主穀作経営体の複合化品目として、たまねぎは県内の1JAで積極的に取組まれてきたが、今年度からは、県内広域的に6JAにおいて栽培され、ほとんどが水田での栽培となっている。にんじんについては、県内10JAで、キャベツについては、加工用を中心に県内12JAで取り組まれている。

実証した作業体系(作業名と使用機械)

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耕種概要

●圃場条件
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●排水対策の実施状況
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●実証内容
実証(1) たまねぎの効果的な排水対策の検討
実証(2) たまねぎの加工業務用栽培に適した品種の選定と機械化一貫体系の確立
実証(3) たまねぎの直播きによる省力化の検討
実証(4) 排水性向上のためのにんじんの超高畝栽培の検討
実証(5) キャベツの生育診断と可変施肥による生育の斉一化の検討

●各区の概要
実証(1)たまねぎの効果的な排水対策の検討
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実証(2)たまねぎの加工業務用栽培に適した品種の検討
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実証(3)たまねぎの直播による省力化の検討
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実証(4)排水性向上のためのにんじんの超高畝栽培の検討
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実証(5)キャベツの生育診断と可変施肥による生育の斉一化の検討
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●主な栽培基準
(1)たまねぎ
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(2)にんじん
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(3)キャベツ
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作業別の能率と効果

排水対策 能率と効果

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畦を割って排水口を設置

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カットドレーン

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(参考)慣行区のサブソイラ

・石礫はなく、簡易暗渠の施工が可能と判断したが、田面から排水枡までの高さが30cm未満だったため、畦を割って排水口を設置した。
・排水口から穿孔暗渠(カットドレーン)を放射状に5本施工したところ、生育後半でも簡易暗渠の排水口から排水が見られ、縦浸透した水が排水口に集水されていた。
・カットドレーンminiは、カットドレーンの20~30cm上に施工した。カットドレーンよりも小さい馬力のトラクタでけん引することができるため、波及性が高い。
・約5mの間隔で施工したところ、透水性や降雨後の水はけが改善された。さらに狭く施工すれば、効果が高まると考えられた。

●型式
スクリューオーガ OM312-OS
(SL54)
カットドレーンKCDS-01
(MR77)
カットドレーンmini KCDM-03
(SL54)
サブソイラ S228(SL54)

畝立成形同時播種(たまねぎ) 能率と効果

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溝底播種


・実証区(直播)で慣行区(育苗)と比べ、10a当たり33時間の削減となったほか、耕起なしでも砕土率が細かくなった。
・播種機はコート種子用のロールを取り付けたが、播種精度が高く、苗立も6割以上確保することができた。
・覆土を細かい精度で調整するためには、さらに砕土率を高める必要があると考えられた。

●型式
パワクロトラクタ SL35
超砕土ロータリ RT-416
播種機 APH-40C

収穫(たまねぎ) 能率と効果

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掘り取り

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ピッカー、運搬


・掘り取りは、10a当たり2.1時間(1人)、拾い上げは、10a当たり13.5時間(2.7h×5人)と、作業の軽労化と省力化が図られることが明らかとなったが、掘り取り機は乗用タイプのものがさらに省力的と考えられた。
・掘り取り機の精度は高いが、畝間に管理機等の溝があると機械が傾き、玉を傷つける場合があった。
・ピッカーは昇降機で運搬車に載せた鉄製コンテナに直接入れるようになっており、かなりの省力化と作業の軽労化が図られる。

●型式
掘り取り機 OH-4
ピッカー KOP-1000

乾燥・根葉切(たまねぎ) 能率と効果

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調製作業


・調製・選別作業は10a当たり180時間となった。
・乾燥機を使用した場合、1週間程度で乾燥できるが、乾燥機の調整にやや時間を要する。
・根葉切り機は、鉄製コンテナからの空け替えにアーム式のリフトが必要となるため、リフトがない場合は、空け替えにやや手間を要する。

●型式
乾燥機 TZ4000
根葉切り機 NOTM-1-5

超高畝成形・播種(にんじん) 能率と効果

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超高畝成形機・播種機

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畝立て直後(畝高さ36cm)


・10a当たりの作業時間は、慣行区の0.8時間に比べ、実証区は0.7時間と省力となった。
・35cm以上の高畝が形成され、湿害の回避にはかなり有効な機械と考えられた。
・畝幅が180cmとやや大きくなった。
・近年の異常気象による大雨や集中豪雨が続いている中で、にんじんの収量と品質を安定させるために有効な方法であると考えられた。

●型式
超高畝成形機、播種機 APH-40C

生育診断(キャベツ) 能率と効果

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ドローンによる生育診断

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ドローンで撮影したキャベツほ場


・定植35日後にドローンで上空30mからキャベツほ場を撮影し、色の薄い箇所に手作業で追肥を行った。10aで5時間の作業時間となった。
・キャベツ収穫機を有効に活用するためには、生育を揃えることが重要であり、そのために生育診断を行い、診断に基づく可変施肥の追肥は、有効である。しかし、ソフト等により画像解析や可変施肥機等の開発によりスマート化を図っていく必要がある。

収穫・運搬(キャベツ) 能率と効果

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収穫機

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運搬


<収穫機>
・10a当たりの作業時間は18時間(3.6h×5人)であった。
・大型の機械だが、多少の降雨であれば翌日の作業が可能。
・オペレーター1名と荷台に4名の計5名で作業をするのが理想である。
・収穫精度を高めるためには、ある程度外葉を付けたまま収穫し、荷台で手作業で葉を落とし、手直しした後コンテナに詰める。
・収穫時の傷は、株の傾きが大きく影響するため、なるべく上を向くような栽培方法で栽培する。株の傾きが大きい場合は、収穫機前に手で傾きを直す。

 <リアリフト>
・鉄製大型コンテナの収穫機への積載及び収穫後のほ場外への搬出にかなり有効であり、効率的であった。

●型式
収穫機 KCH1400
リアリフト RL503

成果

●実証(1)たまねぎの効果的な排水対策の検討
・事前の土壌調査に基づき、排水施工方法を検討した。
・慣行のサブソイラに比べ、実証区ではカットドレーンを放射状に、また、カットドレーンミニを横方向に施工した。このことにより、ほ場の排水性はかなり改善され、地下水位も低く推移した。今秋のような大雨であっても、砕土率の高い畝が形成できた。その結果、定植後の生育も良好に推移し、収量が増加。慣行に比べ玉重が大きくなり、単収が1t/10a多くなった。
・ほ場の排水性が高まり、降雨後の滞水も少なかったことから、排水の効果は高いと考えられた。
・事前のほ場調査により、排水口の高さ等を考慮して、ほ場に合った施工方法を選定することが重要である。作業に要する時間もそれほど増加しない。

 収量調査の結果(6月13日)
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●実証(2)たまねぎの加工業務用栽培に適した品種の選定と機械化一貫体系の確立
・播種後の高温により苗立がやや悪くなったが、その中でも品種間差がみられ、豊山こがね、ターザンの苗立率が高かった。
・定植時の苗質にも差がみられ、甘70で葉鞘径、葉重、根重が大きくなった。
・定植後の地上部生育でも品種間差がみられ、特に葉鞘径で甘70、豊山こがねが大きかった。
・甘70が慣行のターザンより大きくなったが、暖冬により抽たいの発生も多く、ターザン(慣行品種)に勝る品種はなかった。

 収量調査の結果(6月13日)
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●実証(3)たまねぎの直播きによる省力化の検討
・たまねぎの直播栽培では、育苗や定植作業の大幅な省力化が図られることが明らかとなった。
・株立率は6割程度であることから、株間を6cmと狭くして播種することにより、移植と同程度の株立本数が確保できた。
・しかし、直播では、は種後の除草剤登録がないことから、雑草の発生が多く、初期生育がかなり抑制されるため、移植に比べて生育は小さく推移した。直播が移植栽培と同等の生育量を確保するためには、除草剤登録の拡大が課題である。

 収量調査の結果(6月3日)
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●実証(4)排水性向上のためのにんじんの超高畝栽培の検討
・にんじんの超高畝栽培は、栽植本数はやや減るものの、慣行の成形機に比べて畝が高くなり、湿害も回避できることから、収量品質は向上し、昨今の集中豪雨等による湿害対策として有効であると考えられた。
・栽植本数が減るため、収量増の効果は少なく、慣行区との大きな差は認められなかった。

 畝高さの推移
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 収量調査(11月1日)
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●実証(5)キャベツの生育診断と可変施肥による生育の斉一化の検討
・施用時期がやや遅れたため、生育を揃える効果はやや低くなったが、生育のばらつきは抑えられた。
・ドローンでの生育ムラを把握することは可能で、可変追肥の効果は若干認められたが、ソフト等により画像解析や可変施肥機等の開発により、スマート化を図っていく必要があると考えられた。

 追肥前と収穫時における最大外葉長・球径
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当該技術を導入した場合の経営的効果

・たまねぎでは、直播栽培で省力化が図られるが、現在の除草体系では収量の確保が難しいことから、移植栽培の体系とした。排水対策の施工と追肥の機械化で単収増と省力化が図られるが、機械の投資に1200万円程度かかるため30aの作付では利益が出ないが、3ha以上の作付で利益が出ることが明らかとなった。
・たまねぎ跡のにんじん栽培では、超高畝栽培により収量、品質が向上することが明らかとなったが、栽植本数が減少するため収量増の効果は少なく、慣行区との大きな差は認められなかった。
・たまねぎ跡のキャベツ栽培では、ドローンによる生育診断と可変追肥により生育の揃いがやや良くなったが、追肥時期の関係で大きな効果は得られなかった。

今後の課題と展望

・排水対策では、排水路の高さや排水口を考慮した施工方法を検討し施工することが重要であり、土壌調査に基づくほ場ごとのほ場条件に応じた施工方法の確立が必要である。
・直播では、播種後に散布できる登録除草剤がないために、農薬の登録拡大をすすめていく必要がある。
・にんじんでは、湿害を回避するための高畝栽培は有効であるが、栽植本数を確保できる機械の開発が必要である。
・キャベツ栽培では、収穫機を利用する場合、生育を揃えることが不可欠であり、生育診断の精度向上と可変施肥の機械化及びその他耕種的に生育を揃える技術を合わせて検討する必要がある。

(令和元年度 富山県高岡農林振興センター、富山県農業技術課広域普及指導センター)