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野菜

夏播きダイコンにおけるキスジノミハムシの効果的な防除実証(長野県 令和元年度)

背景と取組みのねらい

r1sys_nagano_i1.jpg 長野県飯山地域では夏播きダイコンにおいて、キスジノミハムシの被害が年々拡大している。キスジノミハムシは生育期の薬剤散布のみでは防除が困難な難防除害虫で産地を維持していくためには効率的な防除体系を確立する必要がある。
 そこで、プリロッソ粒剤とフォース粒剤を同時土壌混和処理できる施薬機を用いて、夏播きダイコンにおけるキスジノミハムシの被害軽減について検討をおこなった。

対象場所

●長野県飯山市
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 長野県飯山市は県内でも最も低い千曲川沖積地に広がる飯山盆地を中心とした農業地帯で、冬季は日本海からの季節風が吹きこむ日本有数の豪雪地帯である。年平均気温は11.1℃、年降水量は1,555mm(平成22年1月~平成26年12月の5年間の年平均)であり、一年のうち約3分の1の期間が雪に覆われている。
 水田単作の飯山市農業は、米食味コンクール国際大会に毎年4~6名が入賞するという良質米生産地域で、特に近年は集落営農等の経営体や大型農業者が農地を集約し、さらに大規模経営の展開を進めている。
 また本試験を実施したなべくら高原地区では昭和58年に関東農政局による「飯山市開拓建設事業」の一環として、山林原野約360haを農地開発した。標高差を活かした葉物野菜や根菜類等栽培品目は多岐にわたる。

実証した作業体系(作業名と使用機械)


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耕種概要

●各区の概要
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●圃場条件
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●主な栽培基準
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●薬剤の分布状況
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作業の能率と効果


畝立て播種同時施薬
(耕起・畝立・播種・施薬)
能率と効果

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播種同時作業

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6月19日・20日播種。
実証区の作業時間は0.51h/10a、慣行区は0.55h/10aで、実証区の作業速度がやや優れたが、実証農家では通常作業者に配慮して2,000回転未満で作業しており、実証区は2,200回転前後で作業したため、実際の作業効率はほぼ同等と考えられる。
実証区で用いたトラクタは直進性能付きで、大規模の作付けを行う農業者において作業負担の軽減が期待される。

●型式
トラクタ クボタ NB21
播種機 向井工業 TS-801
アタッチ:
 藤木農機製作所
 TLM15-RW(マルチ無)

成果

 播種後6月21日より2~3日の連続した降雨があり、慣行区の発芽がやや遅れたが、6月27日に両区とも発芽揃いを確認した。7月22日の生育調査では慣行区の根の太りが試験区に比べてやや劣った。

生育調査
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 7月中旬以降の天候は乾燥傾向で進み、例年より5日ほど早い収穫となった。10a当たり単収は慣行区で6.4t、実証区で7.3tと実証農家の平年値よりやや低いが、実証区が優り、階級はL~LLが大半であった。曲がりや裂根の発生は少なかった。

収量調査
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収穫時品質調査
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実証区(左)と慣行区(右)

 地域の農業者への聞き取りや現地JA技術員の情報提供から本年度飯山地域のキスジノミハムシの被害は大きかったが、実証農家では通常よりキスジノミハムシの防除に努めているため比較的被害は少ないものの、慣行区では被害程度が少~多のダイコンが26.7%見られた。
 実証区では被害程度少~中のダイコンが10%で、被害無しは90%と慣行区を上回った。被害度は慣行区が13.3、実証区が4.4で防除効果は実証区が明らかに高いと考えられた。

キスジノミハムシ被害調査
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 プリロッソ粒剤の土壌混和(土中播溝処理)により、防除効果が高まることは明らかであった。地上部の適期防除と合わせて検討することで、キスジノミハムシの被害軽減が一層図れるものと思われる。

当該技術を導入した場合の経営的効果

 実証区は慣行区と比べ農業薬剤費、減価償却費等生産原価は上がるが、キスジノミハムシの防除効果が高く、出荷可能根率が上がるため、最終的な事業利益は慣行区を上回ると考えられる。

経営評価
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今後の課題と展望

 夏播きダイコンにおいて、キスジノミハムシの被害が年々拡大しており、特に6月中旬から下旬播種の作型においては甚大な被害を及ぼしている。プリロッソ粒剤の利用は防除効果が高いだけでなく、出荷可能根率を高めることが出来るので普及性は高いと考えられる。
 播種同時2剤施薬の体系が導入されていない農家においては省力化につながることも期待されるので、現地の実情の把握や意見を聞く中で導入の検討を行っていきたい。

(令和元年度 北信農業改良普及センター(現:北信農業農村支援センター)、長野県農政部農業技術課)