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野菜

キャベツ機械化栽培体系における排水対策技術の実証(福岡県 平成29年度)

背景と取組みのねらい


h29_sys_fukuoka2_6.jpg 福岡県内における水田転作作物は、麦・大豆・飼料用米に加えて露地野菜(レタス、キャベツ、ホウレンソウ等)が主体である。露地野菜は初期投資が少なく、新規栽培者が取り組みやすいため、順調に面積を拡大してきたが、湿害に弱く、秋の長雨や台風による定植作業の遅れ、その後の生育の遅延のため収量が低い。
 そこで今回、表面排水および地下排水を含めた排水対策を行い、加工業務用キャベツの契約出荷に取り組むこととした。明渠、弾丸暗渠に加え、カットドレーンやパラソイラー等効率的な排水対策技術を施工し、加工業務用キャベツの品質・収量向上を目指す。

対象場所

●福岡県鞍手郡小竹町
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 小竹町は、福岡県北部に位置し、中央を北流する遠賀川に沿ってやや広い沖積低地が形成されている。気候は、年平均気温15.7℃、年間平均降水量1,767mm、年間平均日照時間1,831時間で、夏は暑く冬は寒い盆地型気候である。
 明治中期以降、炭鉱町として急激に発展し、1955年以降は閉山が続いた。その後、水田復旧工事にいち早く着手し、水田耕地面積のうち94%が基盤整備されている。

実証した作業体系(作業名と使用機械)

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耕種概要

●主な栽培基準
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●試験区の構成
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●排水対策の実施状況
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作業別の能率と効果

各区共通:額縁明渠能率と効果
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溝掘機

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溝掘機(拡大)


・明渠の横に土を盛ることなく、畝立て、定植作業がスムーズに行えた。
・乗用管理機や、収穫台車を使用する時に段差が邪魔になるため、翌年は、四辺ではなく通路側を開けた三辺に明渠を施行することとして作業性を検討する。

●型式
パワクロトラクタ(48ps)
溝掘機(RD252B)

実証区1 穿孔暗渠能率と効果
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カットドレーンmini


・事前に集水枡を作り、カットドレーンを放射状に施工した。集水枡作成には、パワーショベルを使用し、疎水材としてバラスやモミガラを敷き詰めるため、半日程度時間がかかるが、3年程度は同じ集水枡を使うことができる。
・集水枡から本暗渠につなげた排水口からは、1月の収穫時まで水が出ており、一定の排水効果が確認できた。
・パラソイラーと違って次作に水をためることも可能なため、使い勝手が良い。

●型式
パワクロトラクタ(48ps)
カットドレーンmini(KSDM-03)

実証区2 耕盤破砕能率と効果
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パラソイラー



・今回のように、下層土のち密度が高く排水不良になっているほ場の場合は、面で耕盤破砕ができるパラソイラーの効果が最も高かった。
・翌年も菌核病予防のため湛水することになっているが、水がたまらない心配がある。

●型式
パワクロトラクタ(48ps)
パラソイラー(EPS400)


※収穫期に、土壌の硬度を深さ別に計測した。パラソイラーを使用した実証区2では全体的に深いところまで低い値を示し、土壌物理性の面的改善が示唆された。他の3区は、深いところまで硬度が低い箇所と20cmより深いところで急激に硬度が高くなる箇所があり、低い箇所は弾丸施工付近、高い箇所は耕盤によることが推察された。

※写真・図をクリックすると拡大します

成果

 8月1日に播種し、育苗は順調に進んだ。8月下旬の定植日前後は高温乾燥が続いたため、畝立て直後に定植し、定植直後の苗にかん水を行った。その後9月上旬まで雨が少なく、中旬にまとまった雨が降った。10月は上中旬ともに雨量が多く、特に10月13日から連続11日間降雨があり、10月の日照時間も平年の約40%となった。11月以降も低温、寡日照が続き、生育が抑制され、結球も進まなかった。そのため、本来なら12月の収穫予定を、変更し1月収穫としたが、それでも、収穫適期からは早めの収穫となった。
 収穫調査の写真からもわかるよう、外観は十分大きくなっていたが、キャベツを切ってみると、結球密度が十分でなく、重量は期待したより軽かった。そのため、どの区も、球重は1.3~1.4kgと業務加工用としては小さく、低収量となった。

 収量・品質調査
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 収穫日:1月10日 / 移植から収穫までの日数:132日


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 左から慣行区、実証区1、実証区2、参考区


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 収穫調査

 病害虫については、昨年は菌核病に悩まされたため、6月に湛水処理を行い、今年の病害はほとんど見られなかった。害虫は平年並みに発生したが、防除できた。雑草は全体的に少なかった。
 今回排水対策を実施したが、定植前の雨量が少なく適期に定植できたのに加え、9、10月の長雨も、近年多かったゲリラ豪雨ではなかったため、排水はうまくできていた。比較的降雨量の多かった9月17日は、降雨とともに畦溝に水が停滞し、いずれの区も水位が10cmまで上昇した。降雨量の減少とともに水位も低下したが、各区に差はみられなかった。そのため、生育に大きな差はなかったものの、生育初期から収穫まで、実証区2(パラソイラー)の生育が良く、商品率は最も高く、収量についても10aあたり4tを越えることができた。実証区1のカットドレーンについては、生育初期は出遅れたものの、年末年始にかけて生育が追いついた。

 定点カメラの撮影画像(上段9月17日15:00、下段9月18日15:00)
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 左から 実証区1 カットドレーン/ 実証区2 パラソイラー/ 慣行区 明渠+サブソイラ

当該技術を導入した場合の経営的効果

 収支計算書では、実証法人の経営面積を基礎に、所有機械および実証農業機械について減価償却し、販売価格は契約先の買い取り価格の58.5円/kgとした。
 減価償却は、大型機械については、米麦大豆の面積と按分した。
 また、収穫を2月まで遅らせた方が収量は伸びたと考えられるが、実証区1、2ともに慣行区と比較して、それぞれ367kg/10a、546kg/10a増収し、10a当たり事業利益は実証区1で2.5万円、実証区2で4.0万円、慣行区で0.9万円となり、現在の栽培面積3haを維持すると、事業利益は実証区1で75.4万円、実証区2で119.2万円、慣行区で27.5万円と試算された。

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今後の課題と展望

 平成29年の8、9、10月は連続して雨が降った日が少なかったため、排水対策技術の効果が明確にはわからなかったが、近年の気象状況を考えると、引き続き排水対策を行う必要性はあると考えられる。
 今回の実証調査では、現地検討会を開催し、生産者や普及指導員が機械を見たり、その作業性を確認できる良い機会となった。他地域でも実演会が予定されており、県内全域で排水対策についての意識が高まることが期待できる。
 また、カットドレーンの穿孔の維持やパラソイラー施工後の排水効果を高めるために有機物を投入することの重要性が認識できたため、今後も地力の回復および継続的な土づくりを実践していく。

(平成29年度 飯塚農林事務所飯塚普及指導センター、農林水産部経営技術支援課)