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野菜

たまねぎ機械化一貫体系の確立 -省力・低コスト・安定生産技術に関する実証調査- (兵庫県・平成24年度)

背景と取組みのねらい

 南あわじ市は、水田において水稲、たまねぎ、レタス、キャベツ、はくさいを中心とした三毛作体系が確立されているが、近年、農業者の高齢化や後継者の減少による労働力不足が問題となり、基幹作物であるたまねぎの生産量は減少傾向にある。
 南淡路農業改良普及センターは、平成20年度に全国農業システム化研究会事業を受け、補助クレーンを利用した、たまねぎ収穫作業の効率化を実証し、現在、兼業農家を中心に78台の補助クレーンが普及している。

 たまねぎの生産拡大のためには、兼業農家の生産量を維持するとともに、大規模専業農家や集落営農組織による栽培面積の拡大が必要であり、より作業能率の高い作業体系の確立が必要とされる。
 反面、北海道等で普及している大型コンテナを利用する収穫作業機械化体系は、小面積で軟らかいたまねぎを扱う淡路地域には不向きなため、現行の20kgポリコンテナを使用した収穫作業機械化体系を構築した。

対象場所

 南あわじ市は、淡路島南西部に広がる三原平野を有し、冬季は温暖な気候と比較的水はけの良い土壌条件に恵まれ、たまねぎ1,350ha、レタス1,200ha、キャベツ300ha、はくさい200haなど、西日本有数の露地野菜産地を形成している。
 また、「水稲+はくさい・キャベツ・レタス+たまねぎ」による三毛作体系により、高度な土地利用が図られている。

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実証した作業体系(作業名と使用機械)

●品種  :ターザン、もみじ3号
●作型  :9月下旬播種、12月中旬定植、5月中旬~6月上旬収穫
●栽植密度 :畝幅135cm×株間11.5cm×4条植え

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作業別の能率と効果

育苗・鎮圧 能率と効果
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ポット苗箱押さえ機

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ポット苗箱押え機による作業


ポット苗箱押え機を導入することで、作業時間が慣行に対して24%に短縮された。この機具を利用すると
・楽な姿勢で作業できるため連続作業が可能
・均一に鎮圧できるため苗質が向上
・低価格であるので導入しやすい

 
●型式
みのる式324穴セルトレイ
ポット苗箱押え機(みのる産業)
(NBT-1)

●仕様
(ポット苗箱押え機)
 全長84cm、全幅87cm、
 全高78cm、重量28kg、
 ローラー本数10本



排水 能率と効果
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サイドドライブロータリー用
溝掘機

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溝掘り作業

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10月4日(溝掘6日後)の
圃場


実証試験は9aの稲刈り後の圃場で実施。
圃場の形状が台形だったため、5m間隔で長辺に4本と図のように1本斜めに溝切りを行った。短辺には水尻から1本と反対側にもう1本溝切りを行った。

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溝切りの時間は約10分弱であったが、交差部の手直しや水尻部へのつなぎ直しの時間が11分強かかった。移動時間も含めると27分で作業は完了した。
実施(9月28日)後、29日に4.5mm、30日に78.5mm、10月1日に2.5mmの降雨があったが、10月4日には圃場はよく乾いており、排水効果は高かった。

●型式
サイドドライブロータリー用溝掘機
(LM-195)


病害虫防除 能率と効果
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乗用管理機による農薬散布作業


慣行区(動力噴霧機による手散布)の3名に対し、実証区では1名の作業。
10a当たりの実証区の作業時間は慣行の60%、散布量は慣行の70%(85L)。
作物への薬剤の付着は良好で、作業者への被ばくを最小限に抑えることができ、薬液の散布量も削減できるので、コスト低減にもつながる。

●型式
乗用管理機ハイクリブーム(丸山)
(BSA-500)


積み込み・搬出 能率と効果
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前後に取り付けた搬出作業機

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実証機による積み込み作業

10aあたりの作業時間は実証区で7分(約14%)短縮され、作業強度も下がった。
パワクロトラクタは牽引力が強いので、ぬかるんだ圃場でも機動性が高い。
実証区は必要パレット数が慣行区の約4割増しになる。

●型式
フロントローダー パレットフォーク付
(KLH34R)
リフトキャリア
(LC-50K)




  (写真・図をクリックすると拡大します)

成果と考察

1.ポット苗箱押さえ機による鎮圧作業の省力化
 ポット苗箱押さえ機を導入することで、鎮圧作業時間が慣行と比較して24%に短縮と、大幅に省力化された。苗押さえ板を足で踏む従来の手法は、苗箱上に泥が乗ったり、重心がずれると苗箱が傾き、苗質の悪化が懸念されるが、この機具を利用すると、楽な姿勢での連続作業が可能となる。また、均一に鎮圧できるため、苗質が向上する。

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 水稲の苗箱にも利用可能で、乗用管理機とともに水稲作での共同利用にもつながると考える。すでに一般の農家にも普及しつつあり、当普及センター管内で、すでに75台が導入されている(平成24年12月現在、メーカー調べ)。

2.サイドドライブロータリー用溝掘機による排水対策
 淡路地域では、鍬や管理機で圃場に表面排水用の溝を切るなどの方法がとられている。
 表面排水の効果についてはすでに確認されているが、鍬や管理機による溝切りは作業が大変なため、簡単に溝を切れる機械が望まれている。

 今回用いたサイドドライブロータリー用溝掘機は約10万円と価格が安く、効果も安定しており、一定の深さの溝を簡単に設置することができる。作業時間も10aあたり約30分と短時間で済み、取り扱いも簡便なことから、現地で利用しやすいと考える。
 ただし、旧タイプのロータリーには取り付けアタッチメントが対応していないため、取り付け可能なロータリーの種類が限定される。今後、取り付け可能な機種の拡大が望まれる。

3.乗用管理機によるたまねぎ農薬散布作業の省力化
 慣行(動力噴霧機による手散布)と比較して作業時間が20%に短縮でき、作物への付着も良好で、作業者への農薬被ばく量も少なかった。
 薬液の散布量も削減できるので、コスト低減につながる。

表1 作業時間と農薬散布量
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 実証区は、おおむね散布ノズル直下に均一に薬液が付着し、散布範囲外へのドリフトは非常に少なく、作業精度は高かった。また、作業者への被ばく量は少なかった。
 一方、慣行区はおおむね散布範囲は均一に薬液が付着していたが、散布範囲外へのドリフトが認められた。作業者への被ばく量は非常に多かった。

表2 薬剤散布作業における作業者の農薬被ばく程度
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4.たまねぎ収穫・搬出作業の省力化
 収穫・搬出作業の効率化および軽労化を目的として、フロントローダー+リフトキャリアを装着したセミクローラ型トラクタを用いて、作業の省力化実証を行った。作業時間は慣行区と比較して、10aあたり7分と慣行に比較して約86%に短縮された。

反面、これらの搬出作業機は積載重量が500kgに制限されるため、1枚のパレットに積載できるコンテナ数が慣行32個から実証24個と4分の3となり、10aあたり換算の必要パレット数が、慣行区13枚に対し、実証区では17枚と、約3割増しになるため、コスト増加が課題となる。

 セミクローラ型トラクタは牽引力が強く、ぬかるんだ圃場でも機動性が高いが、旋回時には土を寄せたり、圃場を痛めやすいため、操作には注意が必要である。
 供試機械は、既存のトラクタに装着できる上に、フロントローダーフォークが120万円、リフトキャリアが10万円で、地域で一部普及しているホイールローダーを改良した機械を導入する場合(標準で500万円程度)に比較して導入コストが抑えられる。リフトキャリアのみの装着であれば、さらに経費は10分の1以下になるため、リフトキャリアだけの導入でもメリットは大きい。

 今後は、ピッカーで拾い込みをしたコンテナを、圃場にどう配置すると効率的に作業できるも検討する必要がある。

(平成24年度 兵庫県立農林水産技術総合センター、兵庫県南淡路農業改良普及センター)