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畜産

直播による低コスト・高品質稲発酵粗飼料生産の実証 (山形県・平成21年度)

背景と取組みのねらい

 平成20年度の山形県の飼料イネ作付け面積は約300haだが、尾花沢市内での取組は少なく5ha程度である。

 黒毛和種肥育牛への給与や肉用牛繁殖経営の規模拡大が見込まれるなど、肉用牛への飼料イネ需要は今後高まるものと予測されることから、飼料イネ生産費の低減と調製技術の高度化を当該地域で実証し、低コストで高品質な稲発酵粗飼料の耕畜連携した生産供給システムを普及する。

実証した作業体系(作業名と使用機械)


作業別の能率と効果

播種(湛水直播) 能率と効果
 
種子コーティング

 
田植機(駆動部)・湛水直播機

 
・品種:べこごのみ
・播種:平成21年5月20日
・栽培様式:湛水直播(条播)
・播種量:コーティング種子(カルパー)として13kg/10a(乾籾重として5kg/10a)
・条間:30cm
・播種密度:湛水直播機を50粒/mに調整

圃場の均平が十分でなく、比較的悪条件下であったが、播種機の作業時間は17分/10aと十分な速度であった。

●型式
・田植機(駆動部):ウエルスターNSD8
・湛水直播機:DS-8NK


出芽期は5月30日で、播種後10日を要した。
苗立ち本数は112.5本/㎡で、出芽率は75%であった。防鳥糸を設置したものの一部に鳥害が見られた。
出穂期は8月10日で、葉令は11。
生育期間中、台風等の影響はなく、倒伏は皆無であった。

収穫・調製 能率と効果
 
細断型ホールクロップ収穫機

 
自走ラップマシーン
 

収穫は播種日から147日。生育ステ-ジは完熟期、刈り取り時の稲の水分は45%、新型WCS収穫機(細断型ホールクロップ収穫機)を使用。標準装備の添加装置を用い、乳酸菌(畜草1号)の添加効果を試みた。
ぬかるんでいる圃場の一部を避ける作業動線となったが、単位面積あたり収穫時間は、23分/10a(収穫機稼働時間)と高速であった。

圃場にぬかるむ箇所があったため、ロールをトラクターローダ型のロールグラブで農道に運び、ラッピングマシーンの梱包作業は農道で行った。ラップフィルムはS社販売の淡緑色の両面粘着フィルムを用い、8層巻とした。

・収量 :1,590kg/10a
・収穫率 :90.9%
・実作業時間:11分/10a(ラッピング稼働時間)

●型式
・細断型ホールクロップ収穫機:WB1020
・自走ラップマシーン:SW1100W


飼料イネの品質 能率と効果
 
屋外での貯蔵






開封時のロール正味重量は301kg。
WCSの切断長はほぼ3~5cmの範囲内に収まっており、収穫機のディスクカッターが十分機能していることが確認された。

●発酵品質:
pH:4.6、Vースコア評価:100
●官能評価(外観評価):
・色沢:淡黄色又は黄金色。
・香り:快い軽く甘い酸臭。
・触感:さらっとして粘度がない。
底部にわずかに白カビが認められたが、土砂等夾雑物の混入はなく、黒毛和種肥育牛の嗜好性は極めて高い。

本調査で調製したWCSは、栄養価、発酵品質及びβ-カロテン含有率の3点において、黒毛和種の高級牛(総称山形牛)生産者へ推奨するに十分な飼料に仕上がったものと思われる。


成果

1.当地域の水温が比較的低いことから、播種から出芽まで10日ほど要した。出芽率は75%、苗立ちは112本/㎡であった。防鳥糸を設置したものの、覆土されない部分等一部で鳥害が見られた。

2.収穫時まで倒伏といもち病の発生がなかったが、施肥水準が低いため収量は1,590kg/10a(坪刈り収量)で、目標より低い結果となった。また、β-カロテン含量は乾燥稲わら並に低下した。

3.調製した稲発酵粗飼料(以下WCSと略記)は、色沢、香り、触感等の官能評価に優れ、発酵品質においてもV-スコア法による評価は100点、栄養的にも推定可消化養分総量が60.1%(乾物中)と高く、肥育牛の嗜好性も極めて高いものに仕上がった。

4.直播によるWCSの単位面積当たりの生産費は61,478円/10aで、移植栽培の72,173円/10aよりも低減された。一方、直播の収量が低水準であったことから、単位重量当たりでみると直播が38.7円/kg、移植が30.5円/kgで、8.2円/kg高い結果になった。 

対象場所

山形県尾花沢市 


 

 
 尾花沢市は山形県の北東に位置し、標高は70mから1,500mと起伏に富み、奥羽山脈や出羽丘陵などの山々に囲まれた盆地の中にある。短い日照時間、低温、多湿、多雪のため春の融雪が遅く、農耕期間が短いのが尾花沢盆地の特徴である。冬の季節風が月山や御所山等の稜線にさえぎられ、雪を多く降らせるため、平野部でも積雪量が2mに及ぶことがある豪雪地帯である。

 雪によってもたらされた豊かな水と、尾花沢盆地特有の昼夜の寒暖の差が大きい気候は、米、スイカ、そばなど、多くの農産物を育み、中でも、夏スイカの生産量は日本一で、「尾花沢スイカ」のブランドで全国各地に出荷されている。スイカの他にも肉牛の肥育や、そばの生産も振興されている。尾花沢牛は総称山形牛の中でも頭数が多く、市町村別飼養頭数は東北の1、2位を競っている。雪国尾花沢の気候で育まれるその肉は霜降りでやわらかく甘味があり、地元はもとより首都圏にも尾花沢牛のファンが多い。

(平成21年度 山形県村山総合支庁 産業経済部 北村山農業技術普及課)

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